日本政府は大丈夫か。2021年に世界を襲う5つのグローバルリスク

 

グローバルリスクとしての中国

各国がコロナウイルスの感染拡大に苦しむ中、その発生源となった中国は感染を抑え込み、回復基調に乗っていると言われています。そして今を千載一遇とばかりに、軍事面および経済面の両刀使いで覇権の拡大を目論んでいるという話は昨年も再三行いました。

実際に香港では、一国二制度を終焉さえ、香港が誇ってきた自由を奪い去りました。欧米は挙って反発しましたが、中国は「あくまでも内政問題」と批判をスルーし、我が道を行く方針を強めています。

それは人権蹂躙が噂される新疆ウイグル地区およびチベットにおける弾圧についても同じです。ウイグルでは中国の思想にそぐわない(つまりイスラム教徒)住民を“矯正施設”に収容し、中国化の再教育を行っているという調査報告がありますが、中国政府は一貫してその事実を否定し認めることはありません。人権を重んじる“西側”自由民主主義社会とは、完全に対峙する姿勢を強めています。

軍事面では、南シナ海の実質支配を進めると同時に、東シナ海の権益も主張し始め、日本も関わる尖閣諸島問題については、これまでにないレベルの対立構造を生んでいます。そして軍拡に支えられた野心は、太平洋における覇権への関心へと繋がり、それはアメリカとの直接的な対立を激化させる結果になっています。

軍事力、特に海軍力では、すでに米海軍のキャパシティーを凌駕しているという調査結果もあり、加えて核戦力および弾道ミサイル能力においてもかなりの成長を見せる中、アメリカと中国、そして東南アジア諸国、およびインドとの間に微妙な緊張を生んでいます。

そして経済力では一帯一路政策の下、アジアのみならず、アフリカ、中国、そしてラテンアメリカ、さらには中東欧諸国と南欧にも影響力を伸ばし、融資をベースとしたコントロールを拡げています。ロシアとともに国家資本主義のブロックを形成する勢いです。

もう無敵にも思える中国ですが、実際には国内の政治運営はギリギリの線で行われています。克服したはずのCOVID-19についても、実際の国民感情はまだ安心しておらず、恐怖のあまり経済活動をまだ元に戻せていません。それは雇用の減少にもつながっています。ポジティブサイドでは、人手不足とコロナへの恐怖から、ICTやAIを駆使した非接触型の経済モデルの発展が急ピッチで進んでいますが、その裏では、共産党による国家資本主義モデル下で、債務不履行の横行とそれに伴う金融機関および企業の信用リスクの上昇を招き、政府系金融機関については、いつデフォルトしてもおかしくない状況のようです。

また習近平政権下で倹約重視の姿勢と不動産バブルの増大への警戒に加え、コロナへの恐怖から、中国国民(消費者)は消費を控える傾向を見せており、内需の拡大は見通せない状況です。

そこに加え、これまで貸しに貸し続けてきた一帯一路政策を通じての支援が膨らみ、そこにコロナによる借入国の債務返済能力の著しい低下が加わって、支援国で次々とデフォルトの連鎖が起き、そう遠くないうちにその波は中国にまで及ぶのではないかと予想する専門家もいます。

これらの恐怖を防ぐには、中国共産党が金融システムの支配権を放棄することが必要だとの認識が中国国内でも強まっていますが、昨今のアントグループの例を見ても分かるように、実際の政策はその正反対に向き、金融システムへのコントロールと監視が強化されています。結果、これまで中国経済の高成長率を支えてきたとされる金融部門が成長エンジンの役割を果たせなくなってきているようです。

アメリカでバイデン政権が誕生し、恐らく対中包囲網が強化されていく中、中国共産党体制と習近平国家主席の政策はどのように生き残り、また成長を果たすのか。報じられている以上に大きなチャレンジが待っています。

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