妊娠中や授乳期は大丈夫なのか?医学博士に聞くワクチン最新情報

 

妊婦や授乳中の人はワクチンの治験を受けたのか?

妊娠している人を臨床試験に参加させることが歴史的に制限されているため、今回のコロナワクチンに関しても妊娠している人は特に臨床試験に参加していません。ワクチンメーカーは、ラット等を用いたDART試験(発達生殖毒性試験)を通常行います。ヒトの臨床試験データがない場合に、妊娠中の人にどのような治療法を提供すべきかを決定するためによく用いられるのです。モデルナは昨年12月の段階でDART試験のデータをFDAに提出しました。それによれば、標準的なmRNAワクチンの投与量では、女性の生殖、胎児の発育、出生後の発育に対する悪影響はないと結論づけています。ファイザーも妊娠中のコロナワクチンの副作用の有無を確認するために、DART試験を実施していると述べています。非公式の報告では、今のところ安全性に関する懸念はないとしています。ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは、不活性のアデノウイルス(風邪の原因となるウイルス)を使用しています。この技術は長年にわたって使用されており安全性が確認されています。このタイプのワクチンは、RSウイルスやエボラ出血熱でも乳幼児に安全に使用されてきた背景があります。

ワクチンが母乳を通して赤ちゃんに届くか?

ジョンズ・ホプキンス大学は、これまでのデータから授乳中でもコロナワクチンを接種しても良いとしています。mRNAワクチンは他の特定のワクチンのように生ウイルスを含まないので、赤ちゃんへの危険がないと考えています。また、mRNAワクチンは非常に短命で分解されやすい性質を持っているので、腕に注射された後にスパイクタンパク質を作る司令を送り、すぐに分解されてしまいます。そのため、mRNAが母乳や胎盤を通して胎児に入る可能性は極めて低いのです。従って、コロナワクチンを接種しても授乳を遅らせたり中止する必要もないと考えられています。

一方で、ワクチンによってできた抗体が赤ちゃんの血液にも検出されたという報告がつい先日ありました。サウスフロリダの医療従事者がモデルナのコロナワクチンを接種し、その3週間後に女の子を出産しました。その女の子は健康で、コロナウイルスに対する抗体が検出されました。コロナウイルスに感染すると母体から胎児へ抗体が受け渡されることは知られています。また、インフルエンザ等のワクチンでも抗体が胎児へと受け継がれます。今回のコロナワクチンを母体に接種することで赤ちゃんも受け継がれた抗体によって感染から守られることが期待できます。

ワクチンは赤ちゃんに届かないけれども、身を守る抗体が赤ちゃんに届くとなれば好都合です。マサチューセッツ総合病院は最近、妊娠中の女性84人、授乳中の女性31人、非妊娠中の女性16人の計131人を対象に、ファイザー社またはモデルナ社のワクチンを接種しました。その結果、妊娠中の女性と授乳中の女性にはコロナウイルスに対する強い免疫反応が見られ、被験者から採取した胎盤と母乳サンプルのすべてにコロナウイルスに対する抗体が存在していました。さらに、同病院の母子医療専門医であるアンドレア・エドロー博士によれば、母体のワクチンによって生成された抗体は、研究期間中に出産した10人の赤ちゃんすべての臍帯血から検出されました。こうして、mRNAワクチンを2回接種することで、新生児への抗体移行が促進されることが示唆されました。さらに、イスラエルで行われた別の研究では、ファイザー社のワクチンを2回とも接種した20人の女性全員から、胎盤移行によって抗体が検出されています。

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