妊娠中や授乳期は大丈夫なのか?医学博士に聞くワクチン最新情報

 

妊娠中にコロナワクチンを接種しても良いか

ジョンズ・ホプキンス大学は、コロナワクチンを接種しても妊娠に影響はないと述べています。これから妊娠の予定があってもワクチン接種は可能で、また一連のワクチン接種を終えた後であっても、妊娠を遅らせる理由もないとしています。さて、ワクチンによる不妊疑惑のそもそもは、コロナワクチンが妊娠に影響を与えるのではないかという疑問がネット上で話題になったのが発端です。これはコロナウイルスのスパイクタンパクが、妊娠中の胎盤の成長や付着に関与するシンシティン1と呼ばれるタンパクと同じであるという誤った情報がSNSに流れたからです。つまり「コロナワクチンを接種すると、女性の免疫がシンシティン1と戦ってしまい生殖能力に影響を与える」という虚偽の情報でした。実際は、コロナウイルスのスパイクタンパクとシンシティン1は全く異なります。従って、ワクチンを接種しても妊娠に影響を与えることはありません。ちなみに、ファイザー社のワクチン試験では、試験に参加した23人の女性ボランティアが妊娠し、試験で唯一妊娠を失った人は、実際のワクチンではなくてプラシーボを投与されていました。

妊婦へのコロナワクチンのリスクはかなり低いということが判明しつつある一方で、CDCは妊娠中の女性はコロナ感染による重症化の「ハイリスク群」としています。例として、帝王切開出産、早産、妊娠高血圧症候群、産後出血などのリスクが高まります。従って、妊娠中の女性にとってコロナワクチンの接種は検討すべき事項だとしています。コロナ感染をして発症した妊婦は、集中治療室への入室、人工呼吸器の使用の必要性、死亡のリスクが高まることが報告されています。一方、授乳中の女性は、妊娠していない人に比べて重症化のハイリスク群とは考えられていません。これらの状況を踏まえて、妊娠中の女性は産婦人科医とコロナワクチンの接種について相談をすべきだとジョンズ・ホプキンス大学は考えています。

ただし、mRNAワクチンと妊娠に関して考えられる唯一のリスクは、2回目の接種後に発熱する可能性があることです。ワクチン接種者の約10~15%が副作用として発熱します。動物実験では、妊娠初期に高熱が出ると先天性異常や妊娠損失のリスクがわずかに増加するとされています。従って、ワクチン接種後に発熱した場合、妊娠中でも安全な解熱剤を服用することが現在推奨されています。

WHOが2021年の1月以前は「妊婦への接種は避けるべき」というガイドラインを出していたのをご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、その後今年の1月末にWHOはスタンスを更新しました。妊娠中は感染による重症化のリスクが高いことから、感染のリスクが高い妊娠中の人(医療従事者など)はワクチン接種を検討しても良いというガイドラインに変更したのです。このWHOのスタンスの変化はワクチンの安全性に当初疑問があったからではなく、単にデータが不足していたから慎重なアドバイスをしていたまででした。データが集まり始め、安全性が確認されてきたのを受け、こういった変化になったわけです。

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