ネットビジネスで成功したい人が学ぶべき江戸時代の「商法」とは?

 

3.棒手振りの多様な商品とサービス

棒手振りは非常にフレキシブルなビジネスモデルだった。まず販売する商品を選ばない。何でも売ることができる。

実際に棒手振りで売られていたのは下記のような商品である。

「茄子」「かぼちゃ」「あさり」「しじみ」「貝のむきみ」「豆腐」「油揚げ」「醤油」「甘酒」「ぜんざい」「汁粉」「白玉団子」「納豆」「海苔」「ゆで卵」「握り寿司」「わらび」「椎茸」「竹の子」「鮎」「初鰹」「鱒」「心太(トコロテン)」「飴細工」「冷水(冷たい湧き水に白糖を混ぜ白玉を浮かべたひやみず)」「枇杷葉湯(枇杷の葉を煎じたもので、夏バテや食中毒防止に効くとされた)」「唐がらし」「鮭」「ぶどう」「梨」「鴨」「キジ」「松茸」「焼き芋」「みかん」「干鱈」等の食料品。

その他にも、「ほうき」「花」「風鈴」「銅の器」「もぐさ」「暦」「筆墨」「樽」「桶」「焚付け用の木くず」「笊」「蚊帳」「草履」「蓑笠」「植木」「小太鼓」「シャボン玉」「金魚」「鈴虫・松虫」「錦鯉」「竿竹」「勝負付売り(相撲の勝負の結果を早刷りにして売る)」等々。

更にはサービス業もあった。「錠前直し」「メガネ直し」「割れ鍋直し」「あんま」「下駄の歯の修繕」「鏡磨き」「割れた陶器の修繕」「たがの緩んだ樽の修繕」「ねずみ取り」「そろばんの修理」「こたつやぐらの修繕」「羽織の組紐の修繕」「行灯と提灯の修繕」「看板の文字書き」等々。

販売だけでなく、買い取りサービスの棒手振りもあった。「紙くず」「かまどの灰」「古着」「古傘」「溶けて流れ落ちたろうそくのカス」等々を買い取って歩いたのである。

現在のスーパーの商品やサービス等が全て棒手振りという業態で賄われていた。江戸の町を色とりどりの衣装をつけた棒手振りが様々な商品やサービス、買い取りサービスの売り声を上げながら、町を練り歩く。棒手振りは、売り声や装束を工夫し、いかにして他の棒手振りより目立つかを競い合っていたのである。とてもエキサイティングな江戸の風景が見えてくるようだ。

4.棒手振りとネットビジネスの共通点

棒手振りとネットビジネスの共通点は多い。

第一に「起業のハードルが低い」こと。資本や資格がなくても、誰もが参加できる。

第二に、「どんな商品、サービスにも対応可能である」こと。

第三に、「新規参入者が多く、競合が激しい」こと。

第四に、「個人の魅力が売上を左右する」こと。

第五に、「知恵と工夫次第で新しいビジネスが生れる」こと。

例えば、棒手振りの中にはコスプレのような派手な衣装を身につける者もいた。

有名なのは、「唐がらし売り」で、『近世流行商人狂哥絵図』には、全長6尺(約180センチメートル)のハリボテの唐辛子を担いでいる姿が紹介されている。

寛永年間の頃、薬研堀不動院(中央区日本橋)の近くの店が、唐辛子に六種の薬味を入れて売り出したところ評判となった。これが七色(味)唐辛子の始まりである。

「とんとん唐辛子 ひりりと辛いが山椒の粉 すはすは辛いが胡椒の粉」と歌う口上と、見た目のインパクトがあいまって、唐辛子売りは江戸の名物になった。

これを最初に始めた人は凄い。多分、町に出た瞬間に注目を集め、「おい、見ろよ」「なんだいありゃ」となり、その心意気に感じて、人々は唐がらしを競うように買い求めたのではないか。

口上とは、現在のCMソングのようなものだ。まず、遠くから面白おかしい口上が聞こえてくる。「ありゃ、なんだ」と思っているところに、奇妙なコスプレの唐がらし売りが歌いながら登場する。「え、何、唐がらしなの」という意外性。まさに、エンターテインメントと物販の融合である。

現在、テレビCMではアイドルが商品を紹介しているが、あれがリアルにストリートに登場して、パフォーマンスと共に商品を売ることを想像してみよう。

ネットビジネスでも、オリジナルの楽曲を作り、それを歌いながらライブで注文を取れば、話題になるに違いない。話題になれば、メーカーと交渉して、ライセンス契約を結んだり、独占商品を開発して販売することもできるだろう。

現在のネットビジネスは、新人が親方のところに行って、基本を教えてもらっているレベルである。もっともっと参入が増え、実戦で鍛えられれば、面白いビジネスが次々と生れてくるはずだ。棒手振りはそのヒントになるのではないだろうか。

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