視点を上げてみる
私たちは、こういうバイアスを日常的に発生させています。目に入る一部だけをみて、それを全体のモデルだと捉えてしまったり(かき混ぜていないみそ汁の味見をするようなものです)、もともとの分布を無視して、目の前の出来事が稀な出来事だと判断してしまうのです。
では、そのようなバイアスに抗うにはどうすればいいでしょうか。
一つは、即断しないことです。バイアスは印象なのですが、印象をそのまま決断につなげるのではなく「決断準備中」のものとして捉えることです。そのような空白期間を設けない限り、バイアスの影響をもろに受けることになります。
また、そうして設けた空白期間において、俯瞰の視点を上げてみることも大切です。自分の目に入る部分を意識的に広げてみる、あるいはその分布を遡って考えてみる。そのような知的作法が有効です。
この際に注意すべきなのは、「自分の結論を正当化することを主題にしない」という点です。人間の脳は極めて有能なので、結論を正当化しようと思えばいくらでもできてしまいます。正しくても、間違っていても、正しいように「仕立て上げる」ことができるのです。
そして、すでに最初の印象で「これは正しい」という感覚が立ち上がっています。「正しい」側にはそれ以上の支援は必要ありません。必要なのは、「間違っているかもしれない」側に、意識的な支援をしてあげることです。
そうした支援を惜しみなく行えば、印象がバイアスから解放されることはないものの(脳を改造しない限りは無理でしょう)、「何をどう考え、どんな決断を下すのか」については、バイアスの影響を緩和できます。理性にできる最大限の反抗です。
がんばって、抗っていきましょう。
Be a rebel.(メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』より一部抜粋)
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