顧客と共に創り上げ、育ってきた「3COINS」
「3COINS」が誕生したのは1994年。大阪・キタのファッションタウン、茶屋町の路面に1号店をオープンした。当時は既に100円ショップが人気を博していたが、同社は雑貨好きの人が衝動買いしやすい価格として、300円に注目。千円札で3個買えてお釣りが来るからだ。500円では衝動買いのハードルが高いと考えた。
パルグループHDは、「カスタネ」、「ルイス」などを手掛けるアパレル企業。
「3COINS」で雑貨のブランドに初めて挑戦した。雑貨好きな社員が、社内ベンチャーとして立ち上げた。
最初はオリジナルの商品はなく、メーカー、卸から買い付けていたが、300円(+消費税)均一の値段が珍しがられた。しかも300円以上の価値がある商品が数多く並んでいると、顧客からの支持が高まり、順調に店舗数を伸ばした。
12年2月期には売上高100億円を突破。間もなく店舗数も100店を超えた。
4、5年前にはテキスタイルのブームがあり、ファッションを得意とする同社は、カラフルな色使いを駆使したおしゃれな商品群を提案。商業施設からの出店要請が増え、人材が育成できる範囲でこたえていった。現在はシンプルなデザインが主流と、トレンドが移っている。
「3COINS」は広告宣伝費を使わず、口コミで顧客を増やしており、近年のSNSの発達が追い風となっている。その意味で、顧客と共に創り上げ、育ってきた業態と言えるだろう。
同社の他の雑貨ブランドには、カフェをイメージした300円のプライスのアクセサリーが中心となる「Lattice(ラティス)」39店舗と、“サプライズを楽しもう!”をコンセプトとした遊び心あふれるグッズを提供する「ASOKO(アソコ)」8店舗がある。どちらも「3COINS」の成功を基盤として構築されており、こだわりを持った顧客を獲得している。
「3COINS」には、毎日の暮らしが楽しく便利になるアイデアグッズが満載だ。
売れ筋商品を挙げていくと、まず電子レンジで簡単に即席ラーメンがつくれる「ビストロヌードル」を取り上げたい。
ポリプロピレン製の器に、袋麺の麺、チェーシュー、野菜などの具材を入れ、水を入れて電子レンジで加熱すれば、手軽に栄養バランスの取れたラーメンができ上がる。「ビストロヌードル」が優れているのは、洗練された鍋型のデザインで、器を移さなくてもそのまま丼として使えることだ。食べ終わった後の洗い物も楽だ。
「ちょこっとボウル」は電子レンジで肉じゃがのような煮物、カレー、シチューなどが簡単につくれる便利グッズ。シチューやカレーでは、最初に具材を炒める工程が省け、電子レンジに任せるだけで完成する。湯切りも付いていて、余計な水分を捨てることもできる。
電子レンジでパスタを茹でる「パスタメーカー」もヒットしている。100円ショップにも同様な商品が売られているが、「3COINS」の場合は、中に湯切り用のザルが入っており、より便利にパスタを茹でられる。こうしたちょっとした工夫が、3倍の値段でも購入に値する付加価値である。このように電子レンジを活用する調理グッズは、全般に評価が高い。
「オーロラグラス」はインスタ映えするアイテムとして、常に売上上位に君臨している。光が射す角度や中に入れる飲み物によって、グラスの色が自在に変わる。千円くらいの値打ちがありながら、300円で購入できるといった意見も多い。
「シリコンタワシ」は洗剤が不要なエコタワシとして、しばしば品切れを起こすほど売れている商品だ。洗剤を付けなくでも、フライパンや食器の油を落とすので、環境にも優しく節約にもなる。当たりがやわらかく、テフロン加工のフライパンでも傷つけずに洗える。色が白いので使用した後の汚れが目立つが、「シリコンタワシ」同士を擦り合わせて水洗いすればきれいになる。