アメリカ国防総省も恐れる、中国「サイバー民兵」10万人の脅威

 

私は交渉や調停を行う際、行動心理学の要素を多用しますが、見事に中国が行うこの三戦そして超限戦は、行動心理学に基づいた方法論を採用し、人々、およびリーダーたちの“認知領域”に影響を及ぼし、コントロールする戦いであると考えられます。

例えばどのようなことが行われるのか?

一つ目は、フェイクニュースの発信による心理操作です。対象を台湾とした場合、まず台湾国民に対して、「蔡英文総統および民進党が国民に隠れて個人情報を抜き取っている」とか、「中国の脅威を誇張し、その裏で米軍からリベートをもらっている」といった内容を、最初はそれとなく流し、そこに反応し、その反応をどんどん拡散させていくことで、“事実”を作り上げる手法が挙げられるでしょう。

この狙いは、超限戦でも指摘されたように、蔡政権への不信感を作り上げ、増大させ、そして政情不安を引き起こさせ、その反動としての親中勢力を台湾に作り上げ、内部崩壊を起こさせるという手法です。

同様の内容を、少し加工して、台湾を支持する国々の国民にも発信して、政府批判をさせつつ、社会を混乱させるデマを流し、そして対中厭戦気分を作り上げるという作戦を対外的に同時進行します。

いわゆるプロパガンダ戦争です。事前に用意したいくつものアカウントを用い、あらかじめ準備されたメールや情報、ツイートをタイムリーに流し、それを繰り返し行うことで、イメージを受け手に定着させる働きが考えられます。

特に「中国の台湾への侵攻は中国の内政問題」という主張を時折混ぜることで、そのアイデアを思考に刷り込み、認識を変えるように操作することで、より効果を発揮するという作戦です。

これを先ほど例に挙げたAPT40などに行わせ、同時進行的にbotアカウントによる自動レスポンスを入れ込むことで、情報封鎖を引き起こし、世論操作や言論を統制することで、非軍事的に情報をコントロールして、敵対する勢力を内部から崩壊させるというやり口です。

二つ目は、電磁波攻撃に代表されるスペクトラムのコントロールです。サイバー作戦の一つとして、紛争において敵の介入を阻止または混乱させるために、相手側の通信能力を削ぎ、同時進行的に偽情報を入れ込むことで、作戦を混乱させることを狙っています。

これは今、様々な分野でDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めている日米欧州各国にとっては死活問題になりかねず、特に多くの情報をクラウドに上げて瞬時に共有するシステムを構築させている状況をマヒさせる危険性をはらんでいます。

その端的な方法が、インターネットを含む国際通信の99%を担う海底ケーブルの切断です。

台湾海峡、南シナ海、東シナ海、そして太平洋、インド洋に潜水艦による作戦部隊を配置して行うか、ミサイルや爆弾を用いることで、比較的容易に行えるにもかかわらず、その影響は甚大なものになり得ます。

同じことは中国にも言えそうですが、実は、中国は日米台湾とは違った海底ケーブルを築いているため、同様の攻撃を仮に受けたとしても、その復旧とデータのバックアップには事欠かないというのが、大方の見方です。

仮に台湾有事が起きて、米軍が同盟国と共に迅速に対応したとしても、これらの複次的なサイバー攻撃を加えることで、中国に対抗する勢力の軍事的な作戦と連携を混乱させ、またマヒさせることも可能になってしまいます。

もちろん、アメリカなどもそれを想定した準備と備えはしていますが、単純に米中間の軍事的なギャップと作戦遂行能力の差をベースに「米国優位」という判断をするのは難しいと言わざるを得ないでしょう。

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