アンゾフの成長ベクトル
プロダクト(製品・サービス)と、マーケット(市場・顧客)という視点、そして既存の事業か、新規事業かという2つの視点を持って、上の図のように4つの領域で事業を考えていくというのが、アンゾフの成長ベクトルです。
これは言われてみれば当たり前のことですが、シンプルであるがゆえに見落としがちな考えです。
新規事業というと、多くの人が「流行りものをうちの会社でもやってみよう」といった考えに走りがちではないでしょうか。
しかし、その流行りものが自社の強みや、既存顧客の考えとマッチしなければほとんどの場合失敗してしまいます。
そうならないために、まずはプロダクトとマーケットのどちらかの軸で事業を伸ばしていくのがベストです。
新製品の開発は、既存製品・サービスのバージョンアップや、関連した製品のリリースで、アップセル・クロスセルと呼ばれるような収益モデル。
市場の拡大は、日本で売れたものを海外で展開するなど、事業内容(ノウハウ)はそのままに、新しいチャネルを開拓していくこと。
そしてその縦横が両方成功した上で、さらなるステップアップとして多角化、つまり顧客も製品も全く違う領域での事業に踏みきっていくのが、正しい多角化戦略だとアンゾフ氏は説きます。
一方で、買収や業務提携などの手段を使っていきなり別領域に飛び込んで成功する事業者もいます。それで成功するパターンは、メインで行っている事業との親和性が高い場合です。
例えばリクルート社のAirPAYは決済管理システムなので、一見して人材・メディアという事業とは関係なさそうですが、実はリクルート社ではAirPAYの決裁情報をデータベースにためて、メディア運営のノウハウとして活用しており、メディア事業との強いシナジーがあります。
つまり、プロダクトの強化・マーケットの拡大といった展開が後からついてくると見越しての経営戦略であり、それが市場とマッチしたときに初めて新規事業成功となるのです。
以上、会社経営における多角化戦略の考え方の解説でした。