連日、熱戦が繰り広げられている北京オリンピック。日本人選手の活躍も目立ちますが、その華やかな舞台の裏では、為政者たちが自ら描いたシナリオの具現化に向けて動いているようです。メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』著者の引地達也さんは、平和の祭典の最中に行われている皮肉な現実を憂いています。
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戦争が始まる予兆と限られたメディア情報の行方は
「戦争」が現実味を帯びてきている。
いや、常に世界はどこかで戦争の中にあるのだが、それを私たちが見ていない、だけで、今、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり目の前で大国同士が威嚇し合っている事実に目を背けられないだけかもしれない。
知恵も理性もない威嚇の泥仕合は人類が基本的に進歩していないと宣言しているようで、ため息が出てしまう。
北京五輪の開会式出席のために訪中したロシアのプーチン大統領はこのタイミングで、中国の習近平国家主席と会談し、米国をはじめとする欧州による北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大への反対とともに、中国が問題視されている人権問題等の中国の立場を全面的に支持した。
侵攻が現実味を帯びる中でフランス等の仲裁も活発だが、ロシア、中国、欧州そして米国の構図で繰り広げられるドラマはいつしか教科書で習った近代国家成立の際の出来事だ。
それが平和の祭典の最中に行われている皮肉さ、それも人類の進化なのだろうか。
大衆はメディアによる五輪競技を楽しみ、為政者はその裏で自ら描いたシナリオを現実に向けて進めていく。
年始から始めている本コラムのシリーズでは今回、「戦争と情報 情報の活用と作為性」が予定されていたが、それは現在起こっていることにほかならない。
中国の新華社通信は国営メディアとして、現在溢れんばかりの伝えるべきニュースを世界中に伝え、中国を印象付けている。
それは新疆ウイグルの人権問題でもなく、香港メディアへの圧力でもなく、コロナ禍を克服しながら「成功に導かれる」五輪である。
この五輪は絶対に成功する。主催者である中国、中国共産党が成功と言えば、成功なのだ。
新華社通信が世界にそれを発信すれば失敗はない。この発信と武力行使はリンクするだろう。それは正当な行為として、発信することで、正当化されるという学習に基づく。
大本営発表を信じていたあの時の日本の庶民には情報収集の選択は限られていたが、現在の中国はどうだろう。
そして私たち世界はどうだろう。メディアは人々が正しい判断をするための情報を提供しているだろうか。
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