“コロナ鎖国”で稼いだ時間も水の泡。岸田政権が犯した3つの大失敗

 

仮に本当にキャンセルに発展するということになれば、これは大変な問題です。既にUCシステム(カリフォルニア大)、つまりUCLAとかUCバークレーなどを含むカリフォルニア大学の全体が、日本との交換留学制度を停止しようとしているという報道もありましたが、仮にこれが事実であれば、日本の中長期の人材育成にとって大きなダメージになると思います。

とにかく、1月中旬以降の水際対策というのは、実は水際対策ではなく、国内における「コロナ禍で疲弊した心理が排外感情に転じている」という国内の社会心理学的な問題に転じているわけです。つまり、何の根拠もない話です。

百歩譲って、商談や帰省はまだいいとしても、留学生については一旦来日したら数年は日本に根を下ろして勉強する決意をしている人々です。また、7日の隔離が必要ならそれは大学側が責任を持って対処すればできるはずのグループです。

2月末などという呑気なことを言っていないで、「即刻(effective immediately)」規制を解除して、4月の新学期からしっかり留学生を迎えるべきと思います。入国数の上限がどうという議論も含めて、全て見直す勇気を政権は持っていただきたいと考えます。

もう一つは「水際対策」で稼いだ「時間」をどうして使えなかったのかという問題です。2点議論したいと思います。

1つはどうして病床や医療従事者の準備ができなかったのかという問題です。この点については、今度こそ厚労省と医師会が率直に説明すべきと思います。私は彼らを全面的に非難はできないと思います。

「日本の医療従事者の多くは被雇用者であり契約上の兼業は難しい」

「コロナ死は社会的に許容できるがコロナ以外の死亡については医療過誤を指摘されると医師や病院が破滅する」

「免許業務の拡張も、万が一の死亡例等を突いて世論とマスコミが攻撃する可能性を考えると規制緩和はできない。何も自分達の経済的既得権を守りたいからではない」

という事情があるのだと思います。そうした問題を、心を開いてしっかりと世論に説明し、その上で政治が責任を持って現実的な対策をしてゆくようにしなくてはなりません。

問題の所在について知っているはずの共産党までがダンマリというのは、恐らく医療現場の「労働者の権利擁護」を官僚的な杓子定規でやっているからだと思いますが、こちらも反省してしっかり改革に参加してほしいと思います。

2つ目は、ワクチン行政です。ここへ来てかなり厳しい失敗という状況になっています。

「副反応が嫌だから、あるいは副反応が出ても休めないから3回目は躊躇」

「特にモデルナはイメージが気になるし、交差接種も怖いので躊躇」

という反応が出る、しかもオミクロンの感染力への恐怖や後遺症への恐怖を上回るような格好で「躊躇」が出てしまうというのは、完全に失敗です。

勿論、日本の世論の心理の「あや」というのは複雑で、本当に難しいのは分かります。ですが、8月から9月にあれだけ成功したのに、今回は失敗したということについては、厳格な反省と立て直しが必要ではないかと思うのです。

海外から見ていますと、実に多くの商談や留学がストップし、更に結婚できないカップル、家族の死に目に会えないケース、いや家族が死んでも今でも墓参にも法事にも参加できないケースなど、多くの「我慢」が目につきます。

そうした我慢の結果として、岸田政権は「水際対策」で時間を稼ぐことによって、「オミクロンの危険度を見極め」「医療体制を準備し」「必要に応じてワクチン接種の繰上げをする」はずでした。ですが、ほぼこの3つには完全に失敗しているわけです。これでは何のために国際交流や、在外邦人を我慢してきたのかということになります。

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