「安倍やめろ」とヤジを飛ばした男性に“警官が殺到”した忖度ウラ事情

 

過剰警備であることは、判決を待たなくとも、明白である。総理大臣が演説するにあたって、厳重な警備体制をとっておくのは当然だが、ヤジさえも大勢の警官が寄ってたかって封じようとするのは、尋常ではない。警官たちが咄嗟にそのような行動に出たとは考えられず、まさに組織的、確信的な動きに見えた。

札幌地裁は、「安倍やめろ」「増税反対」といったヤジを「上品さを欠くが、公共的・政治的な表現行為だ」と認めた。むろん「選挙活動をする自由」「聴衆が街頭演説を聴く自由」を侵すほどにエスカレートすることは許されないが、警察側からそのような状況だったという主張は出ていない。

いやしくも民主主義国家において、警察が力ずくで言論・表現を封殺するというのは、あってはならないことだ。

それをあえて行った背景として、当時の警察庁、北海道警の上層部に、安倍首相に忖度して不思議のない面々が揃っていたことを思い起こさざるを得ない。

警察庁というのは特別な組織だ。各都道府県の警察において、一般的な捜査は署長の命令に従うが、公安関係に限っては警察庁警備局の指令で動く。

当時の警察庁警備局長は大石吉彦氏(現・警視総監)だった。2019年に警備局長に就くまで、6年余にわたり安倍首相の秘書官をつとめた人物だ。

警察庁の長官官房長だった中村格氏(現・警察庁長官)は、菅義偉官房長官の秘書官として重用されたあと、警視庁刑事部長をつとめたが、安倍元首相と親しい元TBSワシントン支局長をレイプ容疑で逮捕しようとした所轄署員にストップをかけるなど、政権寄りの処世術が目立っていた。

北海道警本部長だった山岸直人氏は、官邸勤務の経験はないものの、中村氏、大石氏とは警察庁へ同期入庁した間柄である。同期だからといって気脈が通じているとは限らないが、少なくとも連絡をとりやすい仲だったことは確かだろう。

大石警察庁警備局長は同年6月26日付で全国の都道府県警に参院選の警備の方針を通達している。以下は、その一部だ。

「社会に対する不満・不安感を鬱積させた者が、警護対象者や候補者等を標的にした重大な違法事案を引き起こすことも懸念される」「現場の配置員には、固定観念を払拭させ、緊張感を保持させてこの種事案の未然防止を図ること」

「固定観念を払拭」というところに、意図が感じられる。前例にこだわらず、厳しく取り締まれ、ということではないだろうか。中村氏や大石氏にしてみれば、安倍官邸に重用されてきたがゆえの出世街道である。安倍首相が演説時のヤジを極端に嫌っていることは誰よりもよく知っている。

おそらく、安倍批判のヤジを徹底的に封じ込めるという暗黙の了解が、あらかじめ出動警官に共有されていたのではないだろうか。そうでなければ、声を上げた人物をめがけていっせいに大勢の警官が駆け寄るということはないはずだ。

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