黒田総裁の呆れた失言が裏付けた、安倍氏の「日銀は政府の子会社」発言

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世界的なインフレにより各国の中央銀行が、金融引き締めに舵を切るなか、日銀だけは円安も構わずに金融緩和策を堅持。挙げ句の果てに黒田総裁は、物価上昇について「家計の値上げ許容度も高まっている」と発言し、家計のやりくりに苦しむ人々の反発をくらいました。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』で評論家の佐高信さんは、「物価の番人」日銀の総裁として毅然としていた前川春雄さんと三重野康さん、2人の元総裁の考え方を紹介。黒田総裁については、2人と真逆で「物価の番人」ではなくて「株価の番人」と呆れています。

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「株価の番人」の日銀総裁

残念ながら、日本銀行の現総裁、黒田東彦は、最初の選挙で「下々のみなさん」と呼びかけた麻生太郎と同じ程度のアタマの持ち主なのだろう。何と「家計の値上げ許容度も高まっている」などと講演で言ってしまった。

ホンネがでたわけだが、仮にも日銀は「物価の番人」である。安倍晋三の「日銀は政府の子会社」を裏付けるようなこの発言には呆れるほかない。共に「物価の番人」ではなくて「株価の番人」なのだ。

日銀総裁の劣化が激しい。私は1984年に退任した前川春雄を「勲章を拒否した男」として取り上げたことがある。前川には歴代総裁と並ぶ、勲一等が用意されたが、「人間に等級をつける勲章は好まない」と言って、それを断った。1988年に亡くなった前川は死後の受勲も辞退するよう夫人宛ての遺書に明記していた。

より高く、より多くと、飽くなき勲章亡者が跋扈する中で、まことにさわやかな逸話だろう。前川と比較しては前川に失礼だが、黒田は決して勲章を断らないに違いない。

中央銀行は、しばしば、「職業的心配屋」(professional worrier)と呼ばれる。通貨価値が下がることを常に心配して、時に政府とも対立するからである。

「野球にたとえれば、われわれは守ってばかりいるようなチームなんですよ。金融政策等で攻撃に出るようなこともないじゃありませんが、警察と同じで、あまり攻撃に出るのは多くない。守りである以上エラーは許されず、しかもほとんど守っているわけで、その辺がしんどいですね」

“専守防衛”の辛さを前川はこう語っていたが、黒田は「守る」どころか、積極的にエラーをして、安倍のバカなアベノミクスを助けているわけである。

前川の2代後の総裁が三重野康だった。私は1991年『週刊現代』で、三重を“現代の鬼平”と書いた。三重野は当時、「不動産価値はさらに下がり、倒産は続くだろうが、健全な経営をしている企業の倒産にまで至ることはない。自分の体力以上の経営をしてきた咎めが出るのは当然だ」と発言し、金融引き締めの姿勢を堅持することを強調した。それに対し、黒田のやっているのは異次元緩和のバズーカ砲である。

俗にAIDSといわれ、バブル経済で肥大した企業がはびこった。Aが麻布自動車、Iがイトマン、Dが第一不動産、Sが秀和で、これらを“退治”することを三重野はめざしたのである。

こうした三重野に対し、「1にフセイン、2に三重野、3、4がなくて、5に海部(俊樹首相)」と、彼を株価下落の犯人扱いする声が巷にあふれた。低金利のカネ余りの下、地上げ、株上げで存分に甘い汁を吸った者どもが、さらにと三重野に非難の矢を向けた。

同じ日銀総裁ながら、三重野と黒田のやっていることは真逆である。

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