いじめ防止基本方針の変化
「どうやら次のいじめ法改正は骨抜きになるらしい」
その表れなのか、様々な学校が設置している「いじめ防止基本方針」に変化が生じているのだ。
いじめ防止基本方針とは、いじめ法によって各校や自治体などが、いじめの予防や起きた場合の対応、生命の危機などの重大事態が起きた場合の対応などを個々に示すために作られるもので、ある意味、学校などのいじめ対応マニュアルの基礎と言えるものだ。
これを自治体や教育委員会など作り、学校の各校作って、設置することになっており、ほぼ100%の学校が、「いじめ防止基本方針」を設置し、原則公開でホームページにリンクを貼って公開していたりする。
文科省は「いじめの防止等のための基本的な方針」という58頁にも及ぶガイドラインを作成し、ホームページで公開しているが、全ての項目がいじめ対応においては重要なことであり、およそこうしたガイドラインに沿って作れば、各校の「いじめ防止基本方針」は5-10頁は必要になるであろう。
ただし、ガイドラインから逸脱していても何らのお咎めはないわけで、そもそも当初から感度の低い私立校などでは、1頁わずが15行しかないというのも確かにあった。
ほとんどの公立校は、文科省のガイドライン通りに作っており、コピペも目立ったが、一定のルールを、表面上でも当初は守っているように思えた。
しかし、2021年ごろから様子がずいぶん変わってきたことに私は気づいた。
以前対応した学校の「いじめ防止基本方針」が大幅にカットされ、5頁から2頁になっていたのだ。
思わず、以前とずいぶん変わりましたね。と聞いてしまうほどであったが、校長は「自分で作った無理なルールに縛られることになるので」と説明していた。
つまり、文科省がいじめ法に則って作ったガイドラインの通りだと、そもそも「いじめ防止基本方針」がある事をアナウンスしていなかった頃は、保護者も生徒も、「いじめ防止基本方針」を知らないから、問題となることもなかったが、いざ、問題になると、自分で作ったルールが自分の首を絞める形となり、「不作為」であることが明白になってしまうため、大幅にカットしたというわけだ。
「これは生徒の命を守るため、安全な学校生活を送るためのルールですから、生徒のためのものです」
とは言ってみたのものの「はじめて言われました」というほど、驚く校長にこちらが驚く始末であった。
実際、様々な事案で関係者に確認してみると、本来記載しなければならない「重大事態いじめ」についてが全面的にカットされていたという話も耳に入ってくる。
すでに現場レベルで、こうしたルール作りから歪みが生じてきていることは明らかであろう。
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