憲法と同様か。“改悪”の可能性が極めて高い、骨抜き「いじめ防止法」改正

 

被害保護者の多くは大変な苦労を強いられる

そもそも、いじめは加害者の選択によって起きる。被害者は悪くないのだ。

だから、被害者からすれば、ある日突然、被害者になり、エスカレートして、対応せざるを得ない立場になるのだ。

学校がそもそも対応に消極的であれば、その対応にも大変な苦労を強いられ、教育委員会が隠ぺい体質であれば、さらに苦労をする事になる。

弁護士さんが少ない地域であれば、弁護士さんを探すのにも苦労をするわけだ。

交渉に時間がかかり、調査もなかなかしてくれないという事態は、あるあるな問題だ。

さらに、第三者委員会の設置が決まっても、委員の中立公平性や専門性などを知るための、経歴や職能団体の推薦状などの情報を提供しないケースはざらにあり、名簿すら見せないケースもある。

設置要綱がない(つまり第三者委員会のルールがない)状態でスタートしてしまうこともある。

こうしたことは、いじめ法の条文に細かに載っていなくても、いじめ法設置の際の付帯決議や委員会内の答弁などを確認をすれば、違反していることは明らかなのだが、別段罰則があるわけでもないから、強引に進められてしまうこともあるのだ。

こうして被害者側は個人、一家庭として、身銭を切って弁護士さんを雇ったり、活動団体に交通費を払って支援を頼んだりしなければならないということになるのだ(ちなみに私が代表理事の「NPO法人ユース・ガーディアン」は完全に無償なので、交通費すらかからないが…)。

時間も労力もかかる、被害保護者の中にはこうしたことに対応していくために、仕事を辞める方や転職する方もいる。

一方で、データとしての数字にはなかなか見えてこないが、こうしたことをシミュレーションして、引っ越しなどをして環境を変更した方が早いと考える方もいる。

こうした方々は、もはやその地域を捨てた方がいいと考えるわけだ。

いじめ被害者やその家族を見ていれば、その苦労が大変なものであることはよくわかるのだが、なぜか、「保護者の義務強化」ということも法改正ではささやかれ始めているのだ。

もちろん、保護者は加害者も傍観者もいるわけだが、当然に被害者にも保護者がいるわけだから、義務強化となれば、さらに負担を強いることになると予想できるだろう。

確かにこども家庭庁スタートなど、関連するところは多いので、機運があってもよいだろうが、被害者置き去りのまま、大前提が被害者の立場にたってのいじめ法が迷走してはならないはずだ。

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