社用居酒屋から脱却へ。サントリー子会社による新業態の飲食店が新時代を作る

 

モバイルで顧客との関係性を深める

第四弾は「鮨ト酒 日々晴々」。小さな飲食店が立ち並ぶ東京・新宿三丁目に7月21日オープンした。同店は最近ヒットトレンドとなっている「すし酒場」である。

オープンキッチンが清々しい「鮨ト酒 日々晴々」(東京・新宿三丁目)の店内

オープンキッチンが清々しい「鮨ト酒 日々晴々」(東京・新宿三丁目)の店内

まず、フードに独創性がある。中でもおつまみが力強い。うにの殻に入れられた「うにプリン」390円はリアルなうにの下にあるプリンがうにの風味を包み込んでいる。出汁の中でしゃぶしゃぶしたとろける和牛を味が染み込んだ豆腐の上にのせた「レア肉豆腐」590円は肉豆腐の概念を超えている。すし店では珍しいが「ラムカツ~香草パン粉~」690円。こちらは「ナチュラルワインと合う」ことをアピールしている。

「鮨ト酒 日々晴々」の「レア肉豆腐」590円(税込)は1枚250円で牛肉を追加できる

「鮨ト酒 日々晴々」の「レア肉豆腐」590円(税込)は1枚250円で牛肉を追加できる

さらに「特別裏メニュー」というものがある。これはモバイルオーダーを活用し、2回目以降来店の人が注文することができるというもの。フードでは「フォアグラ削り3貫」690円。ローストビーフや希少鮮魚などの握りずしの上に、目の前でフォアグラを削って散らしたもの。ドリンクでは「きゅうり香るジンバック」650円、「大葉のギムレット」650円(以上、税込)と和食に合うカクテルをラインアップしている。

第五弾は「純けい焼鳥 ニドサンド」。“日本一長い商店街”天神橋筋商店街(大阪・天満)の裏手にある居酒屋街に8月22日をオープンした。この業態は「ネオ大衆居酒屋」で、すし酒場と同様今日のヒットトレンド。客層はミレニアル世代とZ世代(1990年半ばから2010年代生まれの世代)を想定。想定客単価は2,800円。

居酒屋が軒を並べる“裏天満”にオープンした「純けい焼鳥 ニドサンド」の店頭

居酒屋が軒を並べる“裏天満”にオープンした「純けい焼鳥 ニドサンド」の店頭

看板のフードメニューは「純けい」の串焼き。これは通常より飼育期間が長い産卵用の親の雌どりで焼鳥、生つくねに歯ごたえがある。「ジャンボ粗挽き肉焼売」も純けい。定番の酒場メニューに加え、和・洋・アジア料理をミックス。バゲットと一緒に食べる「謹製 牛モツ味噌煮込み」。おでんは定番のタネのほか「牛しゃぶ」「餅巾着トリュフソース」「かき揚げ」などの変わりダネも用意。ドリンクメニューではアメリカでトレンドとなっている低アルコールドリック「セルツアー」を推している。

しっかりとした歯応えと旨味が特徴の「純けい 生つくね」1本198円(税込)

しっかりとした歯応えと旨味が特徴の「純けい 生つくね」1本198円(税込)

これら同社の新業態を見ていくと、一つ一つのつくり込みが細かいこと、ストーリー性が豊かであることが挙げられる。フードに加えてドリンクにも斬新なアイデアが折り込まれているのはサントリーというバックボーンであり、メーカーとしての矜持が感じられる。

同社では「これからも新業態をつくり続けていく」とリリースしているが、これらの飲食店が新しい時代をつくり上げていくことであろう。

image by: 千葉哲幸
協力:株式会社ダイナック

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

print
いま読まれてます

  • 社用居酒屋から脱却へ。サントリー子会社による新業態の飲食店が新時代を作る
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け