全固体電池に賭けるトヨタ、3~5年の計画遅れが「致命傷」になるワケ

 

今年に入って、ようやくトヨタも重い腰を上げて、積極的なEV戦略を発表しましたが、現時点で市場に出ているのはbZ4Xのみで、台数も限定的です。

トヨタ自動車のような大きな会社が、進む方向を変えるのは簡単ではないし、稼ぎ頭のハイブリッドから市場を奪うようなことも出来ないので慎重にならざるを得ないのは分かりますが、激しいEVシフトが世界中で起こっている2022年の市場でほとんど売るものがない状況は、致命的とは言わないまでも、大きな問題です。

そんな中で一つ気になるのが、トヨタやホンダが力を入れている全固体電池です。全固体電池は、安全かつ急速充電が可能な「次世代電池」という位置付けで、トヨタやホンダが莫大な研究開発資金と投じると発表しています。

トヨタ自動車は「2020年代の前半」には、全固体電池を搭載した自動車を発売すると宣言していますが、実用化にはまだ課題が多く、実際にいつごろ市場に投入されるかは、現時点ではなんとも言えません。

トヨタの狙い通りに2020年代の前半に実用化が実現し、2020年代後半には「量産」が始まるのであれば、それがトヨタにとっての大きな武器になりますが、万が一それが、3~5年遅れた場合にどうなるのかがとても気になるのです。

現時点では、EV車は全てリチウムイオン電池を採用しており、その電池の確保のために、Teslaや他の自動車メーカーは莫大な投資をして、工場を作り、パートナーシップを組むだけでなく、それを作るのに必要な鉱山の確保にまで手を出しています。

外から見ている限り、トヨタ自動車は「全固体電池の早期実用化」に賭けているように見えますが、それは、裏返せば「リチウムイオン電池へは必要最低限の投資しか行わない」ことを意味します。

つまり、トヨタ自動車は、「とりあえずリチウムイオン電池で電気自動車を大量に作って、シェアを確保する」ようなことはせず、「次世代電池である全固体電池をいち早く実用化させ、それを使って一気に市場を制覇する」戦略を採用しているように私には見えるのです。

確かに、今売れているハイブリッド車のことを考えれば、急いでEVシフトをさせるメリットはトヨタにとっては少ないし、「全固体電池」という強力な武器を持っていれば、2~3年の遅れは十分に取り戻せると考えたくなるのも分からないでもありません。

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