プーチン大統領によるウクライナへの軍事侵攻を受け、ロシアに対してかつてない規模の経済制裁を科した西側諸国。しかしそれから半年以上が経った現在も、プーチン大統領は強気の姿勢を取り続けています。なぜロシアは厳しい制裁に耐えることが可能なのでしょうか。その理由を解き明かすのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回、誰がプーチン大統領を支えているかを解説するとともに、従来のパワーバランスが崩れつつある世界にあって、日本が真剣に検討すべき課題を提示しています。
ロシアによるウクライナ侵攻から半年 プーチンを支えるものとは
ロシアによるウクライナ侵攻から半年が経過するなか、プーチンは依然として強気の姿勢を崩していない。ウクライナ侵攻当初、プーチンはウクライナ軍の実力を軽視し、首都キーウを短期間のうちに掌握できると考えていた。しかし、米国を中心に欧米諸国がウクライナへ大規模な軍事支援を行ったことで、ウクライナ軍が善戦し、ロシア軍のウクライナ侵攻はプーチンの描くシナリオどおりにいかなくなった。ロシア軍兵士たちの不満や怒りも高まり、指揮命令系統が上手く機能しなくなり、戦闘で多くのロシア兵が犠牲となった。現在も一進一退の状況が続いている。
また、ロシア兵による民間人への無差別な殺人もあちらこちらで明らかとなり、ロシアの戦争犯罪が大きな問題になっている。米当局者によれば、今日、ロシア軍はウクライナで深刻な人員不足に直面しており、ロシアはそうした人員不足を埋め合わせるため元軍人や民間警備会社の社員をリクルートしたり、負傷した兵士を強制的に戦場に送りだしたり、兵士の給与を上げるなどしているという。
一方、欧米諸国はロシアへの制裁措置を拡大し、経済的な締め付けを強化している。米国のバイデン政権は7月、ロシアへの追加制裁として、ロシア産の鉄鋼やアルミ、木材など570品目への関税を現行から35パーセント引き上げることを決定した。日本も追加制裁として高級自動車、宝石、宝飾品等などいわゆるぜいたく品のロシアへの輸出をストップさせた。また、制裁とは言えないが、マクロナルドやスターバックス、アップルなど世界的企業が相次いでロシアからの撤退を発表するなど、ロシア進出の外国企業の間では撤退や操業停止、規模縮小などが進んでおり、ロシア経済にとって大きなマイナスとなっている。
こういった政治的、経済的損失をロシアはこの半年で被ってきたが、プーチンは依然として強気の姿勢を崩していない。ウクライナ侵攻はこれまでウクライナで迫害されてきたロシア系住民を守るためだと正当性を今でも強調している。では、なぜプーチンは強気の姿勢を維持できるのか、誰がプーチンを支えているのか。
欧米vs.ロシアという構図で見ると、状況はロシア劣勢に映る。しかし、世界を客観的に眺めれば状況はロシア劣勢とは言えないのが現状だ。それを助長している最大の要因は中国だ。たとえば、9月1日から7日にかけ、中国軍とロシア軍が日本海とオホーツク海で共同軍事演習を実施した。両軍は海上通信・海上経済活動エリアの防衛や、沿岸地域の地上部隊の行動に協力する演習を行ったが、今年3月にも中国とロシアの軍用機が相次いで韓国の防空識別圏に進入した。韓国軍によると、中国の軍用機が済州島付近の防空識別圏に、ロシアの軍用機が韓国東海岸の日本海上空の防空識別圏にそれぞれ進入したという。