また、経済・貿易面でも中国はロシアを支えている。たとえば、中国税関総署は6月、5月のロシアからの原油輸入量が前年同月比で55パーセント、天然ガスが54パーセントそれぞれ増加したと明らかにした。ロシアへの経済制裁が強化されるなか、安価なロシア産エネルギーへの需要が高まっており、中国はロシアとの経済的結びつきを強化している。また、今後GDPで日本を抜くと予測されるインドも同様で、インドは伝統的友好国でロシア産エネルギーへの接近を進めている。米国はロシア産エネルギーを孤立させるためインドへ説得を図ったが、インドはそれを聞き入れなかった。
プーチンを支える多極化した世界
また、多くの中小国も欧米の対ロ制裁に同調していない。欧米諸国がミャンマー国軍へ経済制裁を強化するなか、ミャンマー国軍は孤立を回避するため、8月にミャンマー国軍総司令官がロシアを訪問し、軍事や原子力分野での協力強化などを議論した。今年秋にG20を主催するインドネシアのジョコ大統領も、欧米がプーチン大統領の出席を断るよう求める中、大国間の対立は回避するべきだとの意思のもと、プーチンをG20に招待することを決定した。
他にも、ナイジェリアやケニア、南アフリカやエジプトなどアフリカ主要国もロシアへの態度は硬化させていない。こういった国々はロシアによるウクライナ侵攻をいいと思っているわけではないが、それほど強い関心があるわけではない。重要なのは自国の利益であり、ロシアとの政治経済的結び付きが国益に適うのであれば、ロシアを重視するのである。
このように、全ての国がロシアを非難したり、制裁を実施しているわけではない。中国やインドをはじめ、アジアやアフリカ、中南米など多くの中小国はロシア制裁に加わっていない。こういった多極化した世界がプーチンを支えているのである。言い換えれば、それだけ世界における米国、欧米の力は相対的に弱くなってきている。これまで日本は米国という大国が世界で影響力を維持した世界の中で繁栄と平和を築いてきた。しかし、その時代はもう終わりが近づいてきている。今一度、国家戦略を真剣に練る必要があろう。
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