『ミヤネ屋』に逆ギレ抗議文を送った統一教会の大嘘。「世界日報」元社員が徹底反論

2022.10.18
 

②について。世界日報から私に送られてきた文書には、「過去5代の編集局長に確認しても文教祖のところへ報告に行った事実はない」とある。「過去5代の編集局長」に限ればそうなのかもしれない。しかし、私がいた当時の木下歡昭編集局長は、私たち社員に対し、自分が「お父様」(文氏)によって任命されたアベル(教会内の目上の立場)であることをことあるごとに強調していたし、文氏の下に報告しに行った時の話を何回もしている。

その証拠に世界日報の記事を挙げることができる。文氏は、1991年の11月に突如訪朝した。世界日報は通常は、機関紙といわれないように統一教会関係の記事は控え目にしか扱っていなかったが、この時だけは、連日、一面から文氏訪朝関係の記事で埋め尽くした。私もその時の紙面作りに参加したのでよく覚えている。12月1日付の記事で、訪朝前の文氏が北京空港の貴賓室で、日本統一教会の神山威元教会長や世界日報の木下編集局長らと歓談したことを伝えている――この時の様子は、木下局長が社員たちに向かって、得意げに語っていた。どうして、極秘訪朝の事前ミーティングに、世界日報の編集局長がいたのか。

副島氏が追放されて、木下が副社長を兼任して実質的なトップになるまでの間は、編集に直接関係しない、統一教会や勝共連合が送り込まれた幹部が、世界日報を代表して文氏のもとに行っていた。この点でも、副島氏の記述が参考になる。彼は、編集局長として「愛のマグロ釣り研修」に参加したと述べている。この研修では、何人かの幹部たちが文氏と一緒にマグロ漁船に乗り込み、一緒に釣りをやり、その時にどういう態度を見せたかで、その後の人事が決まる。

マグロ釣りの話は有名で、私も東大CARP(原理研)時代、礼拝などで、釣りに際して、文氏と日本の幹部たちがどういうやりとりをしていたかよく聞かされた。マグロ釣りで、文氏に信仰の弱さを見抜かれた副島氏の人事異動が決まり、それに反発した同氏による社内クーデターに繋がった、というのが統一教会内の公式見解になっていた。私が入社した頃の世界日報社内では、副島事件を繰り返さないように、「真の父母様」に対する強い信仰に基づく紙面作りが大事だと強調されていた。

この件に関して、週刊Flash編集部が世界日報に問い合わせたところ、「10月1日付の記事内容(=抗議文を掲載したもの)以外のことは回答を控える」、とのことだった。旧統一教会と世界日報社との関係については、「世界日報社は教団関係者が設立し、友好団体であるが、両者に資本関係はない」との回答だった、という――10月4日配信のSmart Flash記事「世界日報社「旧統一教会と資本関係はない」と『ミヤネ屋』に謝罪要求」を参照。

私が虚偽の話をしたというのであれば、私が勤めていた30年前に、岩田氏を含む幹部連中が、私を含む一般社員を騙していたことになる。私に謝罪しろという前に、岩田氏を含む『世界日報』の幹部たちが、そのことを謝罪すべきだ――おあつらえ向きなことに、現在の社長を始め、現在の幹部の何人かは、私の在社当時の先輩たちだ。そんなことさえ、世界日報の首脳部は分からなくなっているのかと思うと、元信者、元記者として情けない。

世界日報に関心のある人は、茅場町一丁目の雑居ビルの5階にある現在の世界日報本社を一度見たらいい。ビルのオーナーには申し訳ないが、そこに“本社”があることが、世界日報の現状を象徴しているように思える。

プロフィール仲正昌樹なかまさまさき
金沢大学法学類教授。1963年広島県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修了(学術博士)。専門は政治・法思想史、ドイツ思想史、ドイツ文学。著者に『今こそアーレントを読み直す』(講談社)『集中講義!日本の現代思想』(NHK出版)『カール・シュミット入門講義』(作品社)など。

image by: 不明Unknown author, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

仲正昌樹

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