魚フライ500個を売り切った戦略。セブンイレブンが活用する「仮説-検証」の力

2023.04.29
Nakhon,Ratchasima,,Thailand,-,Aug,29,,2017,:,7-eleven,,Convenience
 

長きにわたりコンビニの王者として君臨するセブン-イレブン。その圧倒的な強さの秘訣はどこにあるのでしょうか。今回、同社の力の源泉を探っているのは、神戸大学大学院教授で日本マーケティング学会理事の栗木契さん。栗木さんはセブン-イレブンが組織的な仕組みのもとで繰り返してきた「仮説-検証」に焦点を当て、その優れたシステムを詳しく解説しています。

プロフィール栗木契くりきけい
神戸大学大学院経営学研究科教授。1966年、米・フィラデルフィア生まれ。97年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。博士(商学)。2012年より神戸大学大学院経営学研究科教授。専門はマーケティング戦略。著書に『明日は、ビジョンで拓かれる』『マーケティング・リフレーミング』(ともに共編著)、『マーケティング・コンセプトを問い直す』などがある。

魚フライ単品で500枚も売れた事例も。セブン-イレブン「仮説-検証」の複眼的活用

日本の小売産業のなかにあってセブン-イレブンは、収益性の高い経営方式を確立している。セブン-イレブンは、組織的な仕組みのもとで仮説-検証を繰り返すことで、売り逃しのロスの低下などを実現していることで知られている。

コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などの事態に直面しなくても、変化が絶えないのが市場である。消費者の嗜好や生活は、常に変化していく。

セブン-イレブンの個店舗では、こうした日々のなかにあって、「今、何が、いつ売れるか」の仮説を考えてみては、この仮説をそれまでの販売データや気象データなどの各種のデータと突き合わせて、その妥当性を確認した上で、発注を行い、さらにその結果となる販売実績をPOSデータで検証するのだという。

そして個店舗で実績をあげた仮説については、エリア内の他の店舗にすばやく導入し、この試行の結果をエリアで検証し、全国に広げる。セブン-イレブンは、このような組織的な仕組みのもとで仮説-検証を繰り返している。

科学的な予測精度の向上にも通じる仮説-検証

セブン&アイ・ホールディングスの会長などを長らくつとめた鈴木敏文氏は、過去の成功体験にしばられることを「成功の復讐」と呼び、過去の体験を未来に向けた行動に持ち込むことを避けるように説いている。そしてそのためにセブン-イレブンでは、組織的な仮説-検証の仕組みを整えている。

セブン-イレブンの成長と収益を支えてきたこの仕組みには、一面で批判的合理主義という科学の方法論と通じるところがある。科学哲学の大家であるK.ポパー氏によって提唱された批判的合理主義は、1回のデータ分析だけで高い再現性のある関係を実証することは難しくても、複数回の仮説-検証を繰り返していくことで、仮説の予測の精度を高めていくことができることに注目する。この批判的合理主義との共通点をもつアプローチが、セブン-イレブンの仕組みには取り入れられている。

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