高齢化社会に一筋の光明。睡眠薬にアルツハイマー病「抑制」の可能性

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日本人の認知症の6割以上を占めていると言われるアルツハイマー病。そんな進行性である脳疾患に対する抑制作用が、ある種の睡眠薬に期待できる可能性があるとの研究結果が発表されたことをご存知でしょうか。「もりさわメンタルクリニック」さんが日刊で配信する無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では今回、日本でも処方されている睡眠薬を用いた研究に関する論文を紹介するとともに、今後のさらなる検証に期待を寄せています。

睡眠薬にアルツハイマー病を抑制する作用があるかもしれない

比較的新しいタイプの睡眠薬に、脳の中にあるオレキシン受容体の阻害を行うことで効果を発揮するもの(スボレキサント等)があります。

今回は、このタイプの睡眠薬であるスボレキサント(商品名:ベルソムラ)に睡眠を促す以外のしくみで、アルツハイマー病を抑制するかもしれないという内容の研究をご紹介します。

Suvorexant Acutely Dcreases Tau Phosphorylation and Aβ in the Human CNS
(スボレキサントが急速にタウリン酸化と脊髄液中のアミロイドβを減少させる)

認知機能低下のない45~65歳の38人(64%が女性)が対象となりました。

13人が10mg、12人が20mgのスボレキサントを服用し、残りが偽薬を飲みました。

その後、2時間おきに脊髄に挿入したカテーテルから採取した脊髄液中のアミロイドβ(アルツハイマー病の原因となる物質)を測定したところ、20mgのスボレキサントを服用した場合にはアミロイドβが低いレベルに留まっていました。

要約:『スボレキサントを一定量内服した場合には、アルツハイマー病の原因物質の濃度が低下する可能性がある』

論文中では翌日も同じパターンで濃度低下を認めたことが示されており、再現性のあることが示されていました。

小規模であり、これによってすぐにアルツハイマー病の抑制にスボレキサントが有効ということにはならないと思われますが、他のオレキシン受容体拮抗薬とともに今後の検証が期待される内容でした。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 もりさわメンタルクリニック 【発行周期】 日刊

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