こうした観点では、効率化は単なる趣味の話になります。誰かが写真にはまるように、誰かが鉄道にはまるように、誰かは効率化にはまる。それだけの話です。それぞれの行為は、やっている最中にもう充実感が得られています。写真を撮った結果として幸せになるというのではなく、写真好きとして生きていく中に幸せがあるのです。
効率化だって同じでしょう。いろいろ試行錯誤している中にもう楽しさはあります。そこで手間をかけ、頭を使っている行為の総体が幸せなのです。その幸せを見ないようにして、効率的な人生は幸せだと考えてしまったのが過ちだったのでしょう。
その意味で、ライフハック的転回は、自己啓発から趣味への転換としても理解できるでしょう(あるいは趣味としての自己啓発として捉えてもいいかもしれません)。
さいごに
このライフハック的転回という視点のおかげで、ずっとモヤモヤしていた気持ちに風が吹いてきました。効率化がもたらす利便性と虚無さのアンビバレントが、落ち着くべきところに落ち着いたのです。
あとはこの観点からライフハックそのものを全体的に再検討していければ、自分なりに大きな仕事になるのかな、という印象があります。一つの新しい思想の立ち上がりです。
というわけで引き続きこの話題については検討していきましょう。乞うご期待です。(メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』2023年6月26日号より一部抜粋)
この記事の著者・倉下忠憲さんのメルマガ
image by: Shutterstock.com