有田芳生氏が暴く、永田町震撼の「拉致被害者2人帰国で解散総選挙」シナリオと安倍元総理「隠された重要問題」

PARIS, FRANCE - MAY 2, 2016 : The Prime Minister of Japan Shinzo during press conference at Elysee Palace (Palais de l'Elysee) for a working visit about the summit of G7 in japan.
 

政府関係者「もしそうだとしたら大変です」

「北朝鮮からは、拉致被害者の田中実さんや知人の金田龍光さんの生存情報が提供されたと報じられています」という問いに、〈北朝鮮からの調査報告の中に、そうした情報が入っていたというのは、その通りです。ただ、それ以外に新しい内容がなかったので報告書は受け取りませんでした。〉外交当事者がはじめて証言したのだ。

ではこの2人は日本に戻ってくるのだろうか。北朝鮮側の説明では、2人とも平壌に家族がいるので、日本には戻らないという。私の取材では、田中さんの妻は日本人だという。いったい誰なのか。拉致被害者ではないのか。もしかしたら、田中実さんを「入境を確認できない」としてきたのと同じく政府認定拉致被害者の松本京子さんではないのか。

ある政府関係者は私に「もしそうだとしたら大変です」と語った。田中実さんは身寄りもなく、「家族会」に入っていないが、松本さんの兄である猛さんは、熱心に救出活動を行ってきた。日本政府はいまからでも田中実さんに面会し、可能な限りの情報収集をしなければならない。そこから「次」につながることもあるのは、私が紹介、分析した政府の機密文書からも明確な教訓だ。ところが岸田政権が日朝交渉を進めようとし、メディアもその方向で期待している局面で、北朝鮮外務省は冷や水をかけるような談話を6月27日に公表した。

北が突然、日本政府への「批判談話」を発表した意味

東南アジアでの水面下交渉を前提に岸田総理が「直属のハイレベル協議」と発言したのは、5月27日。北朝鮮は2日後に外務次官談話を出して、これまでと同じく「拉致問題は解決済み」としながら、「朝日が会えない理由はない」とした。ところが日本政府が6月29日に「拉致問題に関するオンライン国連シンポジウム」をアメリカ、オーストラリア、韓国、EUと共催で開く前日に、朝鮮中央通信はこの会合を主導した日本政府に対して批判談話を公表した。

外務省のリビョンドク日本研究所研究員は、〈日本人らが言っている「拉致問題」について言うなら、われわれの雅量と誠意ある努力によって、すでに逆戻りできないように最終的かつ完全無欠に解決された〉〈日本が実現不可能な問題を旧態依然として前面に掲げ、国際舞台に持ち歩くのは無駄な時間の浪費であり、「前提条件のない日朝首脳会談」を希望すると、機会あるたびに言及している日本当局者の立場を自ら否定するのと同じである。〉

北朝鮮側にすれば「前提条件のない日朝首脳会談」を求めていながら、拉致問題を前提にしているではないかという。ある政府関係者は「本音をいえば北朝鮮が総理に前提条件なしですぐに訪朝してくださいと言ってきたら困りますよ」と私に語った。なぜかといえば「前提条件なし」で首脳会談などできるはずがないからだ。首脳会談の前には必ず議題が設定される。当たり前のことだ。

北朝鮮外務省の日本研究員の談話に対して、日本政府は沈黙している。シンポジウムで松野博一官房長官は、「総理の決意をあらゆる機会を逃さず金正恩委員長に伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、岸田総理直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と公式見解を語るだけだった。

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