有田芳生氏が暴く、永田町震撼の「拉致被害者2人帰国で解散総選挙」シナリオと安倍元総理「隠された重要問題」

PARIS, FRANCE - MAY 2, 2016 : The Prime Minister of Japan Shinzo during press conference at Elysee Palace (Palais de l'Elysee) for a working visit about the summit of G7 in japan.
 

家族会会長が発言した「政府の立場を損なう」刺激的な内容

そもそも日本政府のルートが北朝鮮トップにつながっているかも確認できていない。メディアは遠慮して報じないが、シンポジウムが終わってから行われた「家族会」の横田拓也会長のぶらさがり会見の発言は、政府の立場を損なう刺激的な内容だった。

たとえば〈私たち家族会は、日朝の今後の交渉が進む中で、拉致被害者が帰国することが約束されれば、日本政府が人道支援をすることは反対はしないという立場を表明していますが、この言葉の裏には、この問題が解決されない限り、北朝鮮への制裁は緩めない、そういった意味も込められています。〉日本側の発信が金正恩委員長に届いていると信じて語る流れで、政府が慎重に対応している局面で、「制裁は緩めない」とわざわざ口にする。金正恩委員長でなくとも、日本担当とそれを指導する幹部には確実に伝わる。被害者家族の発言は難しい。

横田早紀江さんはよく言っていた。「私たちには難しいことはわかりません。ただ、めぐみを返してほしい。それだけです」。「救う会」が方針を決め、「家族会」が追認し、それを政府に求めていく。それで外交が進めば問題はないのだが、そうはならない。日本政府は世論に惑わされず外交を進めなければならない。

6月29日に行われた国連のシンポジウムは、5月27日の国民集会の前から準備されたものだ。結果としていかにもタイミングが悪かった。岸田総理は日朝首脳会談に向けて「直轄のハイレベル協議」を口にしている。そこに賭けて9月の臨時国会冒頭で衆議院を解散すると与党や野党からも観測が広がる。日朝交渉は簡単ではない。

8月末には北朝鮮の核問題を議題に日米韓首脳会談が開かれる予定だ。北朝鮮の反発は必至。岸田外交には戦略がない。韓国の「東亜日報」(7月3日)は、日本政府と北朝鮮の非公式協議が6月に北京やシンガポールで行われたが、意見は対立したと一面で報じた。

それに対して松野官房長官は報道を「事実ではない」と否定した。日本政府は、一部で報じられたように、韓国政府の了解をとって動いているというが、そうでもないようだ。その探りを入れるため、韓国政府筋が「東亜日報」を利用した。私の理解では、水面下交渉の時期と場所が違うだけだ。

結局、拉致被害者の帰国と解散・総選挙はあるのか?

さて、拉致問題で2人の被害者が帰国して、解散・総選挙はあるのか。ない、と私は見る。

(1)日朝交渉はそう簡単には進まない。北朝鮮がコロナ「鎖国」にあって平壌での「総理直轄のハイレベル協議」も見通しが立たない。そこに至る水面下交渉もこれからだ。

(2)ましてや安倍政権でさえ実現できなかった首脳会談を行うには、歴代政権の方針を大きく変更する必要がある。

(3)解散、総選挙は岸田総理の判断だが、マイナンバーカードでの混乱、10月からのインボイス制度の導入など、国民生活に直結する諸問題で果たして実行できるのか。もし北朝鮮との首脳会談を実現する方向で外交が進むにしても、来年9月の総裁選挙に向けての課題となるだろう。

小泉訪朝が1年間にわたる秘密交渉で実現し、横田滋さん、早紀江さんのモンゴルでのウンギョンさんとの出会いを成功させた安倍政権も秘密を保持していた。岸田総理のように、水面下交渉があることを公然と国民に語る政治手法で、果たして課題は成就するのか。私は強い疑問を持っている。

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