なぜビッグモーター「LINEパワハラ」は常態化してしまったのか?

 

私が代表として運営している福祉サービス事業所でも現場が数か所にわたって活動しているから、利用者の状況や対応をラインでやりとりするのが、最も対応が迅速になるとの理由で多用している。

これは急性期の患者を受け入れる大規模な精神科病院や行動障がいのある方々への対応をする福祉サービスの現場から学んだことで、情報共有の重要性を認識しながら、その方法を最適化する中で得た知見だった。

神奈川県相模原市の障がい者の入所施設での殺傷事件では、緊急時の対応にSNSが使えたらどのような変化があっただろうか、1人でも救えた命があっただろうかと、と夢想してしまう。

その効果を最大限に考えると、ラインは双方向性を保障していることが最重要であることに気付く。迅速な情報共有がその人を救うことに役立てるものであり、それがコミュニケーションの進化として私たちが学び、活用しなければいけないのであろう。

ビッグモーター問題は独裁的な言葉の使い方に注意すべきだとの教訓も示している。支配や叱責を公開の場で行う「見せしめ」は、権力がマスメディアを操り、それを支配の道具にした悲しい歴史を思い出す。

メディアでの一方的な言説を人々が信じ、虐殺などの異常行動に煽られた事例は少なくない。同時に現代は生成AIが私たちの言葉を学習する時代である。ラインでの「死刑」などという乱暴な言葉は、学習されて生成AIの言語として取り入れられ、私たちの日常に溶け込んで使われていくことになる。

生成AIは私たちの言葉や文化の写し鏡のように完璧に学習していく「頭脳」を持っている。だから、仕事の場面でも常に相手がいることを意識して、丁寧に言葉を考え、発出していきたい。テクノロジーが発展しているからこそ、私たちは考え、伝えなければならないのである。強権的な社内風土が作る言葉がやがては私たちを苦しめてしまわないように。

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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