「何とか私を安倍派の会長に…」と森元首相の前で土下座した“小物政治家”の実名

 

政治家の自己研鑽を妨げてきた統一教会への依存体質

2012年の自民党総裁選では、当時の派閥会長、町村信孝氏が出馬を表明。安倍氏が町村氏の支持要請を蹴り自らも出馬したため分裂選挙となった。町村氏が優勢とみられたが、選挙戦の最中に体調不良で活動を中止したこともあり、結局、安倍氏が勝利した。

清和会で町村氏の推薦人(20人)に名を連ねたのは18人を占め、そのなかには塩谷立氏、高木毅氏、松野博一氏といった面々が含まれる。安倍氏を推薦した清和会メンバーは6人で、下村博文氏や世耕弘成氏がいる。

その後、安倍一強の政治体制が固まっていくにつれ、清和会もそれなりにまとまってきたが、いまだに12年総裁選のシコリは残ったままだ。いつ分裂が起きても不思議ではない。塩谷氏は、そうした現状を承知のうえで、火中のくりを拾う覚悟を固めた。

当初は塩谷会長ですんなりまとまるかと思われた。「5人衆」も下村氏も、塩谷氏に総理への野心がないと見込んでいたからだ。昨年9月29日の派閥幹事会で、下村氏は塩谷氏を会長に推す考えを表明した。いち早く塩谷支持を表明することで、「5人衆」よりも有利な立場になると踏んでのことだっただろう。

ところが、塩谷氏は、派内で将来の総裁候補を育てていくため、「5人衆」を尊重する方向に傾いていった。下村氏はしだいに不信感を強めてゆく。

「5人衆」からも、塩谷会長案に反対する動きが出てきた。塩谷会長のもと、松野、西村、萩生田の3氏を会長代理に据える案が、一部メディアに報じられると、名前があがらなかった世耕氏が反発し、派閥所属の参議院議員38人全員から「世耕氏に一任する」という連判状をとりつけて塩谷氏に反旗を翻した。

こうした状況下、塩谷氏を会長にする案もまとまらず、現在に至っている。この間、森氏は幹部たちの集まりに顔を出すなどして関与を深めてきた。森氏の動きに文句が出てこないのは、権力亡者たちの利害がもつれ合ってカオスになっているからだろう。

昨年8月2日の読売新聞オンラインで、安倍派の後継に関し、森氏はこう語っている。

「誰が安倍さんの後継になるかなんて、簡単に言っているけれども、これだけの数を持っている派閥であれば、トップは必ず、総裁選に出なければいけない。総理、総裁になる心の準備はできているかどうか。政治家以外のところの応援があるのかどうか。それだけの資金力はあるかどうか。(中略)後継になる人は、安倍さんの次はこの人についていこうと派内の人に思われるように自分を売り込まなくては。その努力もしないで、後継になりますと言っても、誰がついていきますか」

森氏の言うことはもっともだが、カネもあり財界からの支援も大衆人気もある人物は、今のところ清和会にはいそうもない。安倍元首相の力や、統一教会に依存してきた派閥体質が、個々の政治家の自己研鑽を妨げてきたのではないだろうか。

それにしても、東京五輪をめぐる汚職事件に、当時の組織委員会の会長として重大な責任を負うべき人が、いまだに自民党の最大派閥を牛耳っていることほど、不条理なことはあるまい。

老害といわれながらも政界にしがみつく森氏にとって、清和会とはいったい何なのか。単なる相談役とかご意見番とは思えない。存在を誇示し、キングメーカーとして君臨するための道具なのだろうか。

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