現役精神科医が教える、「アイデンティティが未確立」な人の共通点

 

アイデンティティ迷子が陥っていると思われること

唐突に造語を作ってしまいましたが多くの人が「自分には価値がない」「自分なんてどうせ」と口にしている現代社会においてはエリクソンのいうアイデンティティが確立している人はかなり少数派と言えるのではないでしょうか。

ここで大事なこととしては「何ができたら(どう生きていたら)他者から褒められるような状態になる」とその人が認識しているか?だと私は思います。

ここでの大きなポイントが「その人」が、という部分です。

単に他の人に席を譲るだけでも「お、優しいね」「気がきくね」と褒めてもらえます。家の中に落ちているゴミを拾ってゴミ箱に入れるだけでも家族から「ありがとう」「助かるわ」と感謝されます。しかしアイデンティティ迷子な人はこう言ったことをやろうとしていない場合が多いように思います。

診察室で(*要注意:ここでいう患者さんは「抑うつ状態」の人は除外します。何故なら抑うつ状態の場合微小妄想という妄想状態となるため[自分が何も悪いことをしていないのに罪を犯したと考える罪業妄想、お金があるのに破産してしまうからお金を使ってはいけないと思い込む貧困妄想、治ることのない恐ろしい病気にかかってしまい死ぬ可能性があるという所まで考えてしまう心気妄想のこと]他者から認められる!とは全然考えられなくなっていますから抑うつについて治療すべきです)「自分の価値があると思えなくてしんどいです」という人が最近すごく増えました。年齢も高校生から社会人まで様々です。

抑うつでもない状態でそういうことをいう人はアイデンティティが確立できないままの人なのかもしれません。こういう訴えをする人に私が「ではどういう人には価値があると思いますか?」と聞くと多くの人は即答できません。

つまり「他者や社会から認められる存在」というアイデンティティを確立させる上で絶対必要であるモデル像が全く欠落しているのです。でも目標もわからない状態でどうしたら価値がある自分になれるというのでしょうか?目標のない自分探しは目隠しマラソン並みにしんどいでしょう。ペース配分もできないし、ここまでいけばあと残りがコレだけだ!という目安があるのとないのとでは大違いです。

真逆の例としては「こういう人が認められる価値のある人です!」としてあげてくる例があまりにも現実と乖離しているパターンがあります。例えば「インフルエンサーの○○さんみたいに大学生でモデルをやりながら起業して~」とか「インスタグラマーの○○さんみたいに本を沢山読んでいろんな人に本の内容をわかりやすく伝えられたり~」とかそういう人を「価値がある」人だと認識して、「自分は○○さんほどフォロワーもいないし…」とその部分において「価値がない」と考えてしまっていると実現はかなり難しいでしょう。

他には入社したての新卒の会社員の人が「自分は上司ほど仕事が出来ないから認められません」と真剣に悩んでいたり。でも上司は何年その仕事をしてるんでしょう。5年?10年?その人と新人の自分が同程度にできなければ価値がないと考えるのは余りにも「自分が自分である」ということと「その自分がありのままで社会に受け入れられる」という状態と乖離しているように私は感じます。

というかこれらの例と自分が同一にできなければ価値がない、と考えるのは余りにも自意識過剰なのではないでしょうか。

つまり、アイデンティティ迷子になっている人というのは「目標設定をしていないことに気付いていない」とか、「目標設定という概念そのものを勘違いしている」し、「目標設定=自分が同等になれるものと信じているけど間違えている」という人が陥りやすいのではないかと思います。

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