ついに公明・創価を見限った自民。元国民民主の議員を「首相補佐官」に抜擢した岸田の本心

 

自民党幹部が見つけた民間労組票という新たな票田

2022年2月22日の衆議院本会議で、国民民主党の玉木雄一郎代表は新年度予算に「賛成」を表明し、岸田政権への協力姿勢を示した。このあたりから、国民民主の連立入りが取りざたされるようになる。

22年7月の参院選では、国民民主党を支援する民間労組が一部選挙区で自民党をバックアップした。当時の自民党選対委員長、遠藤利明氏が以下のように明らかにしている。

「選挙協力」というような明確な協力関係があったわけではない。しかし、遠藤氏は、国民民主を支援する産業別労働組合(産別)の一部が、複数の選挙区で「自民支援ないしは中立という形で動いてくれた」と語った。

 

遠藤氏の念頭にあったのは、電力総連、自動車総連、UAゼンセン、電機連合の4産別だ。自民と連携する理由として「賃上げ問題で自動車、原発政策で電力」などと指摘した。

(8月10日毎日新聞)

参院選公示直前の22年6月上旬、国民民主幹部が4産別の一つの組織内議員を通じ、立憲の現職がいた岩手、新潟、山梨の3選挙区で、自民候補を支援するよう出身労組に働きかけたという。これによって勝利をつかんだ自民党は、労組票を取り込む旨味を実感したことだろう。

この年の1月には、自公間の問題が表面化していた。公明党の石井啓一幹事長が定例会見で、夏の参院選をめぐり選挙協力が難航していることを明かした。自民党の茂木幹事長が兵庫選挙区などで公明党候補の推薦を渋っていたためだ。

その後、それならもう選挙協力はやめだと公明党が強硬姿勢を示したとたん自民党側が折れ、菅義偉前首相が水面下で動いて、合意した経緯がある。

公明党との選挙協力が先行き不透明になりつつあっただけに、自民党幹部は、民間労組票という新たな票田を見つけた思いがしたに違いない。

自民党は長きにわたる公明党との連立で、選挙の足腰が弱くなり、創価学会票なしには勝てなくなってしまった。しかし、近年、創価学会じたいが少子高齢化の進行でじわじわと弱体化しつつある。自民党内には、いつまでも公明党に譲歩していていいのかという強硬論が右派を中心に強くなっている。

22年に続き、23年にも自公の選挙協力をめぐる揉め事が起こり、公明の石井幹事長が「信頼関係は地に堕ちた」と発言、東京の衆院小選挙区で自民党候補を推薦しないと言い出した。自民党内の意識変化を感じ、公明党側が苛立ったとみることもできるだろう。

公明党との交渉に苦労した茂木幹事長は、公明党嫌いで知られる麻生副総裁とはかって国民民主の連立入りを画策し、22年夏ごろから秘密裏に根回しを進めてきたといわれる。労働組合票に手を突っ込むには、国民民主党を味方にするのが近道というわけだ。ちなみに、国民民主党には、連合傘下の自動車総連、UAゼンセン、電力総連、電機連合出身の国会議員7人が所属している。

だが、物事はそう簡単にはいかない。長く選挙で敵対してきた自民党と手を組むことに関して、連合内部の反発が強いからだ。

もともと連合は、大企業系労組(民間産別)を主体とする旧民社党系の「同盟」と、官公労を中心とす旧社会党系の「総評」が合体してできた労組のナショナルセンターだ。近年、大企業系労組が執行部を牛耳り、官公労系の影響力は低下しているとはいえ、連合という組織全体の意見集約を無視し、一部労組が権力側に一気に走るわけにはいかない。どうしてもということになれば、分裂するしかないだろう。

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