執拗とも思える自民党の「工作」の真の狙い
先般の内閣改造で玉木氏を入閣させるもくろみは、そんなわけでとん挫した。そこで浮上したのが、矢田氏の補佐官起用だ。矢田氏は2022年7月の参院選で落選、今年7月に次期参院選への不出馬を表明し、電機連合の役職をやめて、パナソニックの正社員として職場復帰したばかりだった。
矢田氏は今年4月の大阪市長選で自民党から出馬の打診を受け、前向きの姿勢を示したといわれる。その情報を得た官邸が、矢田氏を一本釣りしたようだ。
ただ、この執拗とも思える自民党の“工作”の真の狙いが、国民民主との連立にあるのか、民間労組の取り込みにあるのかは、はっきりしない。国民民主党の内部には「わが党から支持労組を引きはがそうとしているのではないか」とか「結局は自民に使い捨てにされるだけ」といった警戒感もあるらしい。
25年参院選比例代表に自民党が矢田氏を擁立し、電機連合を完全に掌中におさめるのではという見方もあり、連合内部でも「連合をぶっ潰そうというのか」と心配する声が上がっている。たしかに、矢田氏の首相補佐官就任は、連合解体の引き金になりかねない。
芳野会長は「政争の具に使われないよう気をつけてもらいたい」と釘を刺しているというが、麻生副総裁と会食するなど自民党への接近が目立つ芳野氏のこと、先刻承知の人事なのではないかと勘繰るむきもある。
一方、政権の一角を占めることへの異常な執着を持つ公明党は、自公関係に割って入ろうとする国民民主党の動きに神経をとがらせている。
山口代表は矢田氏の人事について「総理が任命した意図に従ってどう生かしていくか、総理のやり方を見ていきたい」、国民民主の連立入りに関して「どこからも私たちは聞いたことがない。連合は連立について否定している」と語り、淡々とした態度のなかにも、拒否感をのぞかせている。
おりしも、麻生副総裁が安保3文書をめぐって山口代表ら公明党幹部を「ガン」呼ばわりする発言が飛び出し、自公間の新たな火種となっている。麻生氏が公明党・創価学会を忌み嫌っていることは周知の事実であり、国民民主党を使って、自公関係の見直しに結びつけたい思惑があるのも確かなようだ。
自民党には、麻生氏のように学会票の助けが不要な議員もいるが、それなしには選挙に勝てない議員も数多い。問題は、自民党がそんな状況に甘んじていることだ。特定の宗教団体に集票を依存し、その結果、政策が歪められるというのでは、真の「国民政党」とは言えないだろう。
自公国の“三角関係”が今後、どうなっていくのか。その成り行きしだいで、日本の権力構造が大きく変わるかもしれない。
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image by: 首相官邸