世界で“銅の戦争”が勃発?需要急増で高騰する「価格」と加熱する「争奪戦」

 

銅とは

銅と聞いて、真っ先に浮かぶのは10円玉ではないのだろうか。しかし銅を使っている硬貨はほかにもある。5円、50円、100円、500円玉硬貨にも銅が使用されている。

銅には優れた抗菌効果があるために硬貨に使われている、と説明する書籍もあるものの、しかし造幣局の広報によるとはっきりした理由は不明であるという(*3)。

他方で、大量に製造するために安定して供給できる金属であり、また加工しやいといった銅の特性により硬貨に利用されていることは間違いない。加えて担当者は朝日新聞の取材に対し、

「銅は古くから身近な金属で、和同開珎などの古銭にも青銅のものが多い。受け入れやすさがあったのかも知れません」(*4)

と答えた。

ところで、最近の銅の価格高騰は、硬貨の製造には影響はないのだろうか。硬貨は重さがはっきりしていて、銅の成分表も公表されている。それらの計算をもとに、

「材料価格が額面に迫る」

といったニュースも見かけるが、造幣局のホームページには、「よくあるご質問」の欄に、「貨幣の製造原価を教えてください」との項目がる。しかし、その答えは、

「国民の貨幣に対する信任を維持するためや、貨幣の偽造を助長するおそれがあると考えられることから、公表していません」

と記載されていた。一方、朝日新聞(*5)はこのようなエピソードを紹介している。

現在はアルミニウムで作られている1円玉であるが、1948年から1950年にかけては青銅の1円が発行されていた。戦時中、軍が使用した薬莢などの青銅スクラップが大量にあったためであるという。

しかし、その後、1円玉を鋳つぶしで使われる可能性が出てきたため、廃止された経緯があるというのだ。

ただ、現在でも極端に変色したり、変形したりしていて再使用不可能な貨幣は、造幣局に戻され、鋳つぶしたあと、再び材料として使用されているという。

争奪戦、再び

東京から1万3,000キロ離れたアフリカ南部の国ザンビア。北西州にあるセンチネル銅鉱山では、カナダの鉱山開発大手ファースト・クァンタム・ミネラルズ(FQM)が、2014年から採掘を続けている。

年間の採掘量は約6,000万トンで、世界6位の規模を誇るその場所は、山を登れば、巨大なすり鉢状のくぼみが広大に広がっているという。

今年の8月10日、この地を経済産業省や独立行政法人エネルギー・金属鉱物物資資源機構(JOGMEC)、商社やメーカーの10社の担当者ら日本の官民視察団が訪問した。

日本は精錬により得られる高純度の銅の生産こそ世界4位(米地質調査調べ)であるが、その原料となる銅鉱石は国外からの輸入に頼る。

輸入先はチリ、インドネシア、オーストラリア、ペルー、カナダの5カ国で95%を占めており、現時点ではザンビアやその隣のコンゴ民主共和国にまたがる、アフリカの一大銅産地である「カッパーベルト」へ進出している日本企業は存在しない(*6)。

そのため、経産省の鉱物資源課長は、

「今後、銅を含む需要は確実に高まる。10年後に『いよいよアフリカ』となってからでは遅い。今から日本企業とアフリカ資源国をつないでいく必要がある」(*7)

と指摘する。

銅の需要の高まりに対し、世界が取るべき施策は何か。イギリスのシンクタンク「E3G」の上級政策顧問は、

  • 銅採掘量の増加
  • 銅のリサイクル量の増加
  • 銅の供給元を一部の国、地域に集中させすぎない
  • エネルギー効率を倍増させ、エネルギー機器そのものの需要を減らす

の4つが必要であると指摘(*8)。

「持続可能で信頼できる銅の供給を確保することは、クリーンエネルギーへの移行を維持し、不必要なコスト高騰を防ぐためにも必要だ」(*9)

と話す。

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