ほくそ笑むプーチン。米国、欧州のウクライナ支援に見えた「変化の兆し」

 

ヨーロッパでは以前からハンガリーがウクライナ支援には否定的である。こうした環境の変化がプーチン大統領の追い風になったことは間違いない。10月5日にソチで開かれたシンクタンクの年次会議「バルダイ・フォーラム」に登場したプーチンは、「ロシアは世界最大の領土を持つ国。これ以上の領土を持つ必要はない」とロシア・ウクライナ戦争を説明。これは今後の世界秩序をめぐる戦いだと再定義してみせた。

同時に、新世代の原子力推進式巡航ミサイル「ブレベストニク」の試験にロシアが成功したと誇ってみせたのだ。原子力で推進し地球全体が射程に入る巡航ミサイル「ブレベストニク」は、「低空を飛び発見しにくい。射程もほぼ制限がなく飛行軌道も予測不可能な核弾頭ミサイル。アメリカの現状のシステムでは対応できない」(軍事専門家で中国中央テレビコメンテータ─ 杜文龍)というのだ。

プーチンは、「ロシアが核兵器を使うのは核攻撃されたとき、もしくはロシアの存続を脅かされたとき」、とアメリカをけん制することを忘れなかった。ロシアは明らかに自信を強めている。

こうした世界の変化を、これまで西側から「中ロ」と一括りにされてきた中国はどう見ているのだろうか。興味深いことに、極めて静かに見守っているのだ。本来、ウクライナ支援を放り出そうとするアメリカは、台湾問題において「アメリカの後ろ盾」の脆弱性を強調する格好の材料のはずだ。そんな好機が空から降ってきたというのに、中国の権威メディアがそうした論調に大きく傾いていないのだ。

これは昨夏、ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問した時に見せた激しい反発と対照的だ。当時、中国メディアはバイデン政権への批判を展開すると同時に「いざというとき、本当にアメリカは守ってくれるのか?」と台湾の人々の不安を煽った──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年10月8日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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