「子ども食堂」は6年で20倍以上に。運営側が悩む資金と行政の壁

 

子ども食堂はベック社の飲食事業部門が協力する形で運営され、同社グループ会社の社員がボランティアスタッフとしても関わる。同社としては社会貢献活動の位置づけだ。この食堂では食事を提供するだけではなく、調理教室も行い、この日は卵焼きやベーコンエッグをボランティアスタッフと一緒に作る体験をした。

卵を割って、卵をかき混ぜ、塩コショウを加えて、フライパンで焼く─。初めての経験に小学校の低学年の子どもはおそるおそる取り組むがきれいな卵焼きができると表情は満面の笑み、周囲から「よかったね」の声がこだまする。

JEO事務局の荒木香さんは「体験を通じて自分でできるようになるといいですね」と話す。食べ終わった子供たちは用意されたゲームや塗り絵でスタッフと遊ぶのもこの子ども食堂の特徴だ。

スタッフである社員らは、子どもとの交流を職業的に行っている立場ではないが、そのやりとりを見ていると、子ども食堂の4年の経験は確実に子どもとの絆が深まっているようにも見える。4年前の開始時は赤ちゃんだった子どもが今や成長し活発に動きまわる成長をみてきたから、もはや他人ではないのだろう。

これらの活動は企業にとっては業務外ではあるが、仲理事は「普段の仕事に誇りを持ってもらうためにもこのような活動は必要」だと話す。「子どもが好きだからね。このような状況を作っているのは自分たちでもあるから、その責任もある」。

先ほどの調査では子ども食堂の開催に関する「困りごと」も収集しており、その中には「保健所から持ち帰りの許可が下りない」「調理品の不足」「個人情報保護のため行政の壁の高さを実感」「衛生用品が手に入らない」「行政と学校の連携が難しい」等が示された。

運営費、行政の協力、衛生面での安全確保等、クリアしなければならない課題が多い中、現在展開中の子ども食堂はその必要性を感じ、生み出すエネルギーを発出し、地域で新しい挑戦をした結果の証となっている。

これらの課題を地域で見つめながら、誰かに頼る形ではなく、地域に必須の取り組みとして行政や福祉サービス、企業が一体となって手掛けられる仕組みを模索し、必要な場所に子ども食堂を増やす使命感を社会全体で認識したい。

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