保身のために「ガザ攻撃」を続けるイスラエルの非道。無法攻撃を許す国際社会の無力と米国のジレンマ

 

保身のために地獄のような攻撃を行うしかないネタニヤフ

イスラエル政府の友人によると「G7がそのような勧告を行うのは自由だが、イスラエルはそれを聞き届け、従う義務はなく、我々は我々の生命と存続のために断固としてハマスを叩き、戦いを続けないといけない」という姿勢がイスラエル政府内の一致した意見だそうです。

これは現在のネタニエフ政権がこれまでにないほど、極右の性格を帯びていることも大きな理由ですが(現役のエルサレム問題担当相がハマスに対する核攻撃の可能性に言及したこともあるほど)、ハマスに寝首をかかれたこと、世界有数の諜報機関に位置付けられるモサドが今回の奇襲攻撃を予測できなかったこと(注:エジプトの情報局は、モサドに対し、ガザ地区での不穏な動きをシェアしていましたが、ネタニエフ首相がまともに取り合わなかったと言われている)、そして240名以上の人質をハマスに取られたことなどが、ネタニエフ政権の失政として非難の的になっていることなどから、ネタニエフ首相としては、自分の保身のためにも、地獄のような攻撃を行うしかないという分析が多くあります。

今回のイスラエルとハマスの争いがどのような形式で終わりを迎えたとしても、ネタニエフ首相の責任が問われることは間違いないと感じていますが、首相が今、態度を軟化できない理由も理解できます。

「ハマスが人質を確実に解放するまで、停戦という文字は私の頭の中にはない」とネタニエフ首相は繰り返し述べ、“同盟国”から要請される人道支援のための一時停戦にも全く応じない状況ですが、どこかで自らを八方塞がりの状況から救い出してくれる策を懸命に探っているように見えます。

その糸口は、現在、エジプトとカタールが行っている人質の解放のための調停努力ですが、こちらもカタールの担当官が認めるとおり、非常に苦心しているようです。

今、ハマスに(まだ生きている)人質のリストを作成させ、一時的な戦闘の停止と引き換えに10名から20名単位で人質を解放するというアイデアが提案されており、ハマス側はそれに応じる用意があると答えているようです。

しかしイスラエル側は、表向きは「ハマスを信用できない」とカタールからの提案を拒否しているようですが、水面下では話し合いを続けており、何とか出口を探ろうとはしています。

ただ、実際にはイスラエル軍からの強い推しもあり、イスラエルの部隊がガザ中心に侵入し、ガザ市を北と南から挟み撃ちにし、人質の捜索とハマスの地下通路の破壊を繰り返していますが、ハマスは人質をこの地下通路に閉じ込めているという情報が多く、イスラエル軍による攻撃で人質も命を落としているというのが、どうも現実のようです。

終わりの見えない惨劇。失われていく命。破壊し尽くされたガザの街。そしてハマスに人質に取られた、愛する家族の帰りを待つイスラエルの市民。

悲劇は広がり、イスラエルとパレスチナの一般市民の心を痛め、絶望が広がっていますが、その絶望的な状況は問題解決における諸国の機能不全と、それらを引き起こしているそれぞれの思惑に影響されています。

まず本来ならば中立的な国際機関として問題解決に乗り出さなくてはいけない国連は、ウクライナ以降、安保理常任理事国が完全に対立構造にあり、全く決議が通りません。停戦に向けた提案も数多く出されますが、時間ばかりが無駄に流れ、何一つ効果的な対策を取ることができていないのが現状です。

そこに輪をかけて、「国連安保理においてイスラエルに対する非難は常にアメリカの拒否権発動により成立しない」というジンクスが今回も継続しています。

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