保身のために「ガザ攻撃」を続けるイスラエルの非道。無法攻撃を許す国際社会の無力と米国のジレンマ

 

イスラエルの攻撃で命を落とした92名もの国連関係者

そして今回、UNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業機関)だけで職員92名がイスラエルによるガザへの爆撃に巻き込まれて命を落とし、WHOやWFP、そしてUNICEFも職員が被害にある状況を前に、国連は現地での活動を停止せざるを得ず、ガザ地区は現在、見捨てられている状況になっています。

それは現地で活躍するNGOも同じで、外国人職員たちが先日、ラファ検問所からエジプトに逃れざるを得ず、機能的な支援がストップしている状況になっています。いろいろと聞く限り、現地の状況はまさに地獄絵図とのことですが、支援対象の人々に寄り添えないことへの心苦しさに苛まれているようです。そして、何よりもイスラエル側が通信インフラを頻繁に切断することで重要な連絡が遮断されており、支援が進んでいません。

隣国エジプトは、現在、ハマスに人質に取られたイスラエル人と外国人の解放と数日間の戦闘停止とを交換条件に、イスラエルとハマス双方の間で調停努力を試みていますが、先述のように、調停は難航しています。

ただエジプトは、調停は行うものの、ラファ検問所の開放は拒否しており、ガザからのパレスチナ人を受け入れることがハマスのエジプトへの侵入を許し、それがイスラエルを刺激して、戦端がシナイ半島に広がることを非常に恐れ、警戒しています。

ゆえにガザ市民に逃げ場所を提供できず、人道的な危機をより高めているという非難も受けています。

調停努力を続けるカタールについては、イスラエル政府とハマス双方に話し合いのチャンネルがあり、ハマスの政治部門のトップがドーハに滞在していることもあり、迅速かつ効率的に話し合いの場を設けることが出来るのですが、調停対象はあくまでも人質解放と人道支援のための一時戦闘停止に限られており、あえて中長期的なイスラエルとパレスチナの“ありかた”に対する内容には触れたくはないようです。

今回、調停グループが協力する際にも、パレスチナの在り方については議論のテーブルにあげるべきではないという要請がカタール政府から来ていますが、背景を尋ねてみると、アラブ諸国との協議なしにカタールが勝手に触れていい問題ではないからとの回答がありました。

以前、イスラム同胞団やフーシー派などとのリンクを指摘され、サウジアラビア王国をはじめ、スンニ派の国々から国交断絶措置を受けたため、非常に周辺国の出方と考えには敏感になっているようです。

ではその“周辺国”はどのように今、振舞っているのでしょうか?

共通しているのは“イスラエルが行う過剰防衛の行為と報復が国際人道法違反であり、イスラエルがパレスチナの人々に課す集団的懲罰ともとれる措置は明らかな戦争犯罪である”という立場と、“ガザ地区のパレスチナ人との揺るぎない連帯の表明”です。

ここで注意したいのは、ハマスの行動を支持することはしていないことです。ハマスがこのような行いに出たのは、イスラエルの長年の圧政が理由であるという見解は一致していますが、ハマスが人質を取り、イスラエルからの攻撃に対しての人間の盾として用いていることに対しては、明確に反対の意思を表明し、一刻も早い人質問題の解決を訴えています。この姿勢がエジプトとカタールによる調停努力を後押ししています。

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