パー券ウラ金疑惑もオスプレイ墜落も「放置」する、日本政治の嫌な“空洞”

 

均衡が成立しなくなってきた中で起きたオスプレイの墜落事故

ということで、安全保障を扱う政治思想については、左右の両派ともに非現実的であり、その非現実的な極論が相互に引っ張り合う中で、全体としては真ん中で均衡する、そのようなメカニズムが作用していたのでした。

そうなのですが、昨今の情勢下、この均衡が成立しなくなってきているのを感じます。そうではなくて、ある種の「空洞」をそこには感じます。

まず保守と言われているグループでは、非現実的な自主防衛論や枢軸名誉回復論というのは、やや弱くなっているように見えます。その上で、ロシア、中国、北朝鮮の動向を考える中で、米国への依存、依拠というのがかなり強まっているのを感じます。かつての「親米保守」が何層にも重なった奥には自主防衛と核武装の意図を秘めていたのとは違って、現在の「親米保守」は極端な米国依存へと変質しているようです。

これに対して、左派のグループでは、国際情勢の変化を受けて「非武装中立論」というのは成立しないという感触は広まっているように見受けられます。では、積極的な軽武装を志向しているのかというと、そうでもなく、むしろ安全保障の問題を話題として避けているのを感じます。

政治的なテーマとしても、排出ガス削減より反原発を優先する形での環境問題とか、少数者の権利であるとか、あるいはハコモノに反対する左の小さな政府論、更には格差是正や子育て問題など、身の回りの問題への関心が強いようです。そのこと自体は、悪いことではないのですが、反戦とか非武装というようなテーマへの関心は薄れているのを感じます。

そんな中で、今回は米軍のオスプレイV22の墜落事故という問題が発生したわけです。V22という航空機は、ヘリコプターの特性に似た垂直離着陸性能を有しながら、巡航にあたっては大型プロペラ機としてヘリを遥かに上回る高速移動が可能です。また難しいとはいえ、空中給油も可能ですので足も長い機材です。

このV22の戦略的な意味というのは重要です。主として2つ意味があると考えられます。1つは小規模な島嶼の防衛です。小規模な島嶼では滑走路を設置することができません。ですが、V22の場合は滑走路がなくても垂直着陸ができます。また緊急事態に当たっては遠距離を超えた急派が可能です。

ということは、安易に小島への侵略行為を行っても、V22が重武装して急行すれば、その意図を挫折させることが可能です。そこから逆算すると、小島の近辺に兵力を配置して緊張を拡大することなく、小島への侵略意図を予め抑止することが可能になるわけです。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • パー券ウラ金疑惑もオスプレイ墜落も「放置」する、日本政治の嫌な“空洞”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け