経営者なら一度は聞いたことのあるドラッカーの言葉。そのなかで、今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、ドラッカー学会共同代表理事の佐藤等氏が、日本人なら誰でもハッとさせられる「ある言葉」について語っています。
日本人なら誰でもハッとさせられる言葉
ドラッカー学会共同代表理事の佐藤等氏がビジネスに役立つドラッカーの言葉を毎月、分かりやすい解説を交えながら紐解く「仕事と人生に生かすドラッカーの教え」。
月刊『致知』で5年近くにわたって続いている人気連載のひとつで、単行本化もされています。(『ドラッカーに学ぶ人間学』)
本日は、2020年1月号に掲載された印象に残る話をご紹介します。
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日本人なら誰でもハッとさせられる言葉に「真摯さ」があります。
英語でintegrity──翻訳者の上田惇生先生の名訳です。
「真摯さはごまかしがきかない。一緒に働けば、特に部下にはその者が真摯であるかどうかは数週間でわかる。
部下たちは、無能、無知、頼りなさ、不作法などほとんどのことは許す。しかし真摯さの欠如だけは許さない。
そして、そのような者を選ぶマネジメントを許さない」
『現代の経営』
真摯さのない者は、マネジャーに就けてはならない。
重い言葉です。
この組織ではこんな人が評価され昇進していくという強いメッセージとして伝わるからです。
それゆえ真摯さを欠くマネジャーは組織を破壊します。
逆に昇進人事はよき組織風土を築くための重要な機会となります。
「人事において、断固、人格的な真摯さを評価することである。
なぜならば、リーダーシップが発揮されるのは、人格においてだからである。
多くの人の模範となり、まねされるのも人格においてだからである」
『現代の経営』
経営者をはじめとしたマネジャーが真摯さを身につけていることは、マネジメントの礎といっても過言ではありません。
では真摯さとは何なのでしょうか。
ドラッカーはいいます。
「真摯さの定義は難しい。だが、マネジャーとして失格とすべき真摯さの欠如を定義することは難しくない」
『マネジメント』
人の強みよりも弱みに目を向ける者、何が正しいかよりも誰が正しいかに関心をもつ者、自らの仕事に高い基準を設定しない者、部下に脅威を感じる者、実践家ではなく評論家……ドラッカーが示した真摯さの欠如を示す典型例です。
言葉では説明しにくい真摯さも一緒に働けば数週間でわかるといいます。
さらにドラッカーは、真摯さの有無を知るため「彼の下で自分の子供を働かせたいと思うか」というシンプルなテストを示しました。定義できずとも明確な判断基準となります。
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