羽田衝突で隠蔽される本当の事故原因「安倍時代の政治圧力」とは?現場に責任を押しつける犯人探しが始まった

 

安全より経済優先、政治家と役人の無責任ぶり

また、以下の記事では、各国で導入が進んでいるADS-Bという安全装置の導入が日本では進んでおらず、事故を起こした海保機も未搭載だったことを指摘しています。

「日本で最も忙しい羽田空港の常駐機にADS-Bが搭載されていなかったことは、世界の常識と照らし合わせると考えられないことで、国土交通省はこの事実をどう説明するのか」と問いかけています。

●関連記事4:“羽田衝突事故「海保機に非搭載だった」と海外メディア報じる装置とは 欧米で義務化 日本は事故後も“沈黙”(2024年1月15日公開)乗りものニュース

結論として、今回の事故の根底には、安全よりも経済を優先した政治の圧力が影響した可能性があります。

事故調査においては、直接的な事故原因の究明にとどまることなく、

  1. 成田空港がありながら羽田空港に超過密運用を強いることになった歴史的経緯
  2. 安倍政権時代にまともな国会審議も経ずに官邸主導で東京上空に2本の隣接した新ルートを強引に開設した手続き上の問題
  3. それら新ルートの安全性と危険性
  4. 米軍横田空域の影響
  5. 管制官やパイロットに強いている過重負担

など、事故の背景にある諸問題を徹底的にあぶり出して欲しいものです。単に、現場の管制官やパイロットに責任を押し付けて終わりにするようなことだけはあってはなりません。

その上で、この事故を教訓として、あらためて羽田と成田の役割分担や、全国に乱立する地方空港との連携を全体最適の観点から全面的に見直し、管制官の配置人数なども含めて、現場に無理を強いることのない安全最優先の航空行政へ転換して欲しいと思います。

なお、国土交通省は 「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」 なるものを設置して1月19日に第1回委員会を開催するそうですが、開催時間は僅か1時間です。

このような有識者会議は往々にして政府寄りの人たちを集めた形式的な場に終始することが多いので、どこまで実効性のある安全対策の話が出来るのかは疑問に思います。

■筆者脚注

(*1)ポリタスTVのビデオでは、佐久間さんは進入復行をGo aroundと呼び、着陸復行をTouch-and-goと呼んでいますが、正確には、進入復行はMissed approachと呼ばれ、着陸復行にGo around(接地することなく急上昇して着陸をやり直すこと)とTouch-and-go(接地した後に再び離陸すること)の2種類があるようです。

■本文中に掲載した以外の参考記事、ビデオ

●関連記事5:JAL機炎上、そのとき何が 検証・羽田空港衝突事故(2024年1月9日公開)日経新聞 ↑ 上からスクロールしていくと、1月2日の事故の全容がわかりやすく図解されています。

●関連動画2:日航機と海保機の衝突事故が露わにした羽田「過密」空港の危険度(2024年1月10日公開)VIDEO NEWS ↑ 神保哲生さんのYouTube番組ですが、元JALパイロットで航空評論家の杉江弘さんへのインタビューです。杉江さんは早くから羽田新ルートの危険性を指摘し続けています。

●関連記事6:「羽田は世界でいちばん危険な空港になる」(2020年3月27日公開)日経ビジネス ↑ 2020年3月の羽田新ルートの運用開始直前の上記杉江さんへのインタビュー記事です。

※本記事は有料メルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』2024年1月19日号の一部抜粋です。このつづきに興味をお持ちの方はこの機会にぜひご登録ください。パーソナルコンピューター史の変曲点となり得る「AI PC」の最新動向を紹介した「1.気になったニュースから」のコーナーや、読者質問コーナーもすぐに読めます

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image by: 内閣官房内閣広報室, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

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