ジャニーズと“同じ轍”は踏まず。吉本興業が松本人志を「文春に差し出す」ワケ

 

組織防衛を優先する吉本興業のビジネススタイル

果たして、ジャニーズ事務所のように、組織もろとも崩壊する道を選ぶのか、あるいは、松本人志という大功労者を切ってでも、これ以上の被害拡大を食い止めるのか、その判断はそれほど難しいものではないだろう。

実際、「事実は一切ない」と強調していた吉本興業は、すぐに「聞き取り調査を進めている」と発言を転換し、松本の訴訟にも事実上関与しない方針を示した。

今年(2024年)で112年の歴史を数える吉本興業が、たったひとりのタレントのために、会社を潰すような判断をしないのは当然といえば当然なのである。

実は、過去の事件やスキャンダルでも、吉本は組織の論理を優先させてきた。中田カウス(吉本興業特別顧問)や島田紳助(司会・タレント)などの不祥事の際にも、組織防衛を優先している。その理由は、ここ10年来の吉本興業のビジネススタイルにある。

いまや芸能プロダクション最大手の株式会社である吉本興業は、パソナも驚きの「公金ビジネス」漬けになっている。古来、お笑いは権力から距離を置くことで支持を得てきた。権力を笑い飛ばすことで、一種の社会的な清涼剤となり、庶民の快哉を代弁する形になっていた。

だが、今日、価値紊乱であるべき吉本興業が、政府の下請けに成り下がっている。悲しい限りではないか。

政府の君側の奸に成り下がっただけではない。いまや吉本興業は、メディア、とくにテレビメディアの下請けにも成り下がってしまった。吉本興業のそうした不健全な関係はなぜメディアの批判に晒されないのか?それは、吉本興業の株主構成をみれば、こたえのひとつが見えてくる。

12.13% フジ・メディア・ホールディングス
8.09% 日本テレビ放送網
8.09% TBSテレビ
8.09% テレビ朝日ホールディングス

上記民放4社の大株主を筆頭に、他にも「テレビ東京」「朝日放送」「ソフトバンク」「Yahoo!」「電通」「毎日放送」「ドワンゴ」「松竹」「ドワンゴコンテンツ」「関テレ」「読売テレビ」「角川ホールディングス」「博報堂」「テレビ大阪」「博報堂DY」などのマスコミ各社が株主に名を連ねている。

吉本興業は政府のみならず、徹底したメディアコントロールによりその利権を守られてきた。これはもはやひとり吉本の問題ではなく、政府やメディアも含めた日本の社会の病理そのものだと指摘せざるを得ないだろう。これで、テレビやマスコミに吉本興業の問題を追及せよというのがどだい無理な話なのだ。そうした意味で週刊文春はひとり奮闘していると言っていいだろう。

この記事の著者・上杉隆さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • ジャニーズと“同じ轍”は踏まず。吉本興業が松本人志を「文春に差し出す」ワケ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け