「スパイに注意しろ」。先輩ジャーナリストから受けた忠告
さて、吉本興業の存在において不可解なのは、メディアだけではなく、個人の知識人や文化人たちからの批判が皆無だったということだ。年間売上が500億円を超えているにも関わらず、中小企業扱いで税法上の優遇措置を受けている吉本興業が、政府や記者クラブメディアと密接な関係にあるのは想像に難くないが、なぜ個別のジャーナリストや評論家まで彼らを擁護するのだろうか?実はその仕掛けはいたってシンプルだ。
筆者は、かつて文藝春秋社員で『週刊文春』編集部にも所属したジャーナリストの勝谷誠彦氏とよく番組で共演したものだった。『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ)や『ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)では、局入り前後に、同じジャーナリストとしてよく意見交換をしたものだった。とくに、私が、テレビ・ラジオのレギュラー時代には、官房機密費と記者クラブ問題に触れる際の注意点を、評論家の宮崎哲哉氏とともに親身になってアドバイスしてくれたものだった。
今は亡きその勝谷さんが、吉本興業についてだけ、次のように忠告してくれていたのが印象に残っている。
「上杉さん、吉本もマスコミとつながっているんですよ。そこは批判できないような番組構成になっている。ぼくは上杉さんのことが好きだから、宮哲さんとはテレビに出てほしいといつも言っている。だからこうして注意するんだけど。政治家もジャーナリストも吉本興業所属や関係者が、たくさん上杉さんの周りにはいますよ。結果としてスパイ活動をさせられています。上杉さんはニューヨークタイムズ出身だからわからないだろうけど、日本のテレビ、とくに関西では吉本の力は絶大です。吉本の批判はタブーですよ。そこは本当に注意してください」
実際に、中野寛成、松沢成文、林久美子など、与野党関係なく国会議員も吉本所属であったし、驚くことに、当の勝谷氏自身も吉本興業所属のジャーナリストだったのだ。
『週刊文春』報道を、各社が扱いだした途端に、勝負はあったのだ。吉本興業が、政府とマスコミのすべてを敵に回してまで、守る人物はひとりも存在しない。
次回は、松本人志が『週刊文春』に絶対に勝てない二つ目の理由、2023年7月の法改正について、解説する。
(次回配信号に続く)
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image by: Hideto KOBAYASHI from Machida, Tokyo, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons