過去最高の人口増加も「経済破綻」危機という異常事態。いまドイツで起きている現象は「明日の日本」か?

 

困窮する難民受け入れ自治体と悪化する治安

22年、ドイツの人口は8,436万人で、1990年の統一以来最大といわれたが、前述のように、翌23年にはそれがさらに30万人以上も増え、2年連続で記録更新となった(最終的な数字は、今年の7月に発表の予定)。近年、ドイツの死亡者数は出生数を上回っているので、増加分は、主に新来の難民のおかげであることは間違いない。

過去に入った移民もそれなりに多くの問題があるのだが、そちらはさて措くとして、現在の火急の問題はこの難民だ。まず、数が膨大で、その他のEU国が受け入れている難民を全部足したよりも多い。しかも、政府がそれらの難民を容赦なく州に送り込み、州政府は仕方なくそれを自治体に振り分けるから、実際に受け入れている市町村が困窮している。

難民は、正確にはまだ難民ではなく、難民希望者だ。申請、審査の結果、政治、人種、宗教などの理由などで迫害されていることが認められれば、難民として庇護の対象となる(経済的理由はダメ)。そして、母国での危険が去るまでドイツに滞在でき、就労も許される。

とはいえ、受け入れた自治体ではそれとは関係なく、彼らが到着したらその日から最小限の衣食住の手当てはしなければならない。ところが、どこも満杯で、閉鎖した工場や倉庫や兵舎、学校の体育館にベッドを並べたり、空き地にテントを張ったりするうちに、さらに難民が送られてくる。仮設住宅の建設などとても追いつかない。

もう一つの問題は治安。シリアやアフガニスタンのように、いずれ難民として受け入れられる可能性の高い国からの難民も、あるいは、認定の可能性などほぼない北アフリカ諸国やバルカン半島から入ってきている難民も、どちらもほとんど全員が若い男性だ(難民と認定されて一定期間が過ぎれば、家族を呼び寄せられる)。

彼らの多くは、ドイツは豊かで、仕事があり、良い暮らしができ、さらにいうなら、働かなくても福祉で暮らせるなどという口車を信じてやってくる。ところが来てみたら、狭い宿舎にすし詰めにされるわ、元気余って欲求不満になるわ…。そこへ持ってきて、これまでアルコールなど口にしたことのなかったイスラム教徒が、飲み慣れないビールを飲んで酔っ払って喧嘩をしたり、やはりイスラム世界ではあり得ないビキニ姿の女性を眺めて節制を失ったりと、事件は限りなく起こる。

実際に22年から、これら外国人(多くは難民申請者)によるナイフを使った暴行事件や婦女暴行事件が急激に増えた。それどころか、小・中学生の女の子が殺傷される事件まで起こり、難民宿舎が近くにある地域では、女の子のいる家庭は神経を尖らせている。

そんなわけで、2015年、メルケル氏と共に難民を歓迎し、自分たちの人道的行動に胸を張っていたドイツ人が、今ではすっかり様変わりし、新しい難民宿舎ができると聞くと激しい反対運動が巻き起こる。入居前に放火された施設さえあった。

治安の乱れは、すでに皆が感じる。昔は、夜、一人で歩いても怖いなどと思ったことのなかった私でさえ、今では夕方以降は人通りの少ないところは避けるようになった。最近、旅行者がリュックを前に下げているが、こんな光景など数年前のドイツでは見ることがなかった。

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