過去最高の人口増加も「経済破綻」危機という異常事態。いまドイツで起きている現象は「明日の日本」か?

Frankfurt,Am,Main,,Germany,-,November,26,2018:,German,Police
 

深刻な少子化による労働力不足を、移民の受け入れにより解消を図ろうという姿勢を取る日本政府。しかし安易な「移民頼り」は、大きな問題を引き起こす恐れと背中合わせのようです。今回、作家でドイツ在住の川口マーン惠美さんは、移民を大量に受け入れ続けるドイツが直面している数々の問題を紹介。その上で日本政府に対して、移民・難民政策の修正を求めています。

プロフィール:川口 マーン 惠美
作家。日本大学芸術学部音楽学科卒業。ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ドイツ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。ベストセラーになった『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、『住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)をはじめ主な著書に『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)、『復興の日本人論』(グッドブックス)、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)、『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)など著書多数。新著に、福井義高氏との対談をまとめた『優しい日本人が気づかない残酷な世界の本音』(ワニブックス)がある。

安易に移民に頼るな。日本政府がドイツの現状から学ぶべきこと

2023年末、ドイツの人口が8,470万人になった。ドイツの人口は出生率の低下により、11年は8,033万人、12年が8,052万人と、あわや8,000万人を切りそうになっていたことを思えば、すごい盛り返し方だ。

きっかけの一つは、15年に突然、メルケル首相が中東難民に国境を開き、例の「難民ようこそ政策」が始まったこと。15年と16年で89万人の難民が流入したと言われている。当時、ドイツで滞在が認められ、あるいは容認され、留まった人たちも大勢いたが、そのまま素通りして北上、あるいは西進してドーバー海峡を越えた難民や、行方をくらました難民もたくさんいた。しかし、政府は国境管理能力を失っていたので、流入者の正確な数字は今もわかっていない。

一方、正確に出ているのは出産数で、11年には60万件にまで下がっていた出産件数が一気に増え、16年と19年は80万に迫った。難民は、滞在が認められると、徐々に家族を呼ぶことができるので、新たにやってきた妻たちの出産がドイツの人口をさらに増やした。ちなみに、ドイツでは出産は誰でも無料。入院費も含めて1ユーロもかからない。

その後、22年には2度目の難民襲来が起こった。主因はウクライナ戦争。ドイツの人口は22年の1年だけで112万人も増えた。

ドイツのみならず、EUでも増え続ける難民は深刻な問題となっており、どうにかして制御しようとさまざまな努力が重ねられている(解決の目処は立っていないが)。ただ、ドイツ政府だけは、本気でそれに足並みを揃える気があるのか、ないのか…?ウクライナ難民にせよ、中東難民にせよ、その急増がドイツ国内に甚大な問題をもたらしているというのに、ドイツ政府の動きは極めて鈍い。

ドイツは大陸国なので、太古の昔より人の出入りは多かった。近年で言うと、90年のドイツ統一から97年までの7年間で269万人増。これは、過去にロシア(ソ連)や東欧に移住したドイツ人が、冷戦終了を機に大量に戻ってきたことと、もう一つはユーゴ内乱による難民の受け入れによる。

その後も難民はあちこちから入り続け、さらにEUの東方拡大などでルーマニア、ポーランド、ブルガリアなどEU内からもコンスタントに移住が続いた。一方、出ていくドイツ人もじわじわ増え、行き先はスイス、オーストリア、そして米国などだ。

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