一党独裁体制がアダに。習近平政権では中国経済が復活しない理由

 

3.「東昇西降」という妄想

米国、日本が中国に投資したのは、「中国が経済成長を果たし、市場経済を経験すれば、最終的に民主主義国家に移行する」と考えたからだ。しかし、「中国が繁栄すれば民主主義に転換するとの期待の下で続けていた従来の関与政策は失敗だった」とトランプ政権下のポンペオ国務長官は2020年7月の演説で認めている。

当時の中国政府は、この発言を米国の敗北宣言と受け取り、益々自信を深めた。習近平はスピーチの中で、何度も「東昇西降」と語っている。これは、「東の中国は上昇し、西側先進国、特に米国は下降する」という意味だ。

「中国は世界の工場であり、世界の経済大国だ。世界は中国に依存している。中国製品を輸入できなくなれば、困るのは先進国である」と習近平は信じ込んでしまった。そして、大国になったのだから、自分が世界のリーダーになるべきだと考えた。経済に関する知識もないので、習近平は「中国経済は自分が命令すれば、コントロールできる。経済が悪ければ、経済を良くすると言えばいいし、不動産業界が不況ならば、不動産業界を立て直すと言えばいい」と思っていたのだ。

2022年12月、中国政府はゼロコロナ政策の転換を図った。世界は中国経済の回復を期待した。しかし、2023年の春節が明け、工場は再開したが、注文は来なかった。そして、若年層の失業率が増大した。

ゼロコロナ政策は、西側先進国にも大きな影響を与えた。発注しても、いつ商品が届くか分からない状態が2年間も続き、企業はサプライチェーンの組み直しを余儀なくされた。中国にある外資企業は次々と撤退し、商品の調達先を中国から東南アジアやインドに振り替えた。

また、中国の大手不動産開発企業が次々と債務不履行を起こした。それでも、政府は不良債権処理を先延ばしし、今度は金融機関の破綻が始まった。

2023年になり、ようやく習近平政権も中国経済が簡単には回復しないことを感じ、焦りが見えるようになった。しかし、あらゆる経済政策は機能していない。それは、表面的な対策に終始し、根本的な対策が打てないからだ。

4.自動調整がきかない中国経済

民主主義という政治体制、資本主義という経済体制は、問題を自動的に修正する合理的な制度だ。

民主主義は、選挙によって議員が選ばれる。一部の特権階級に富が集中するような政策は、国民に否定され、指導者は選挙で落選する。もし、中国に選挙があれば、習近平は指導者の立場を維持できないはずだ。

資本主義は、需給バランスにより価格が変動する。株式も債権も需要と供給で価格が変動する。もし、中国の不動産も需給バランスにより価格変動が起きれば、これほどの供給過剰は起きなかっただろう。中国政府は不動産価格が下がることを認めなかった。そして、不動産企業の倒産も認めなかった。そのため、不良債権処理もできず、赤字を垂れ流すゾンビ企業となっている。

民主主義、資本主義という自動システムと、国際法という常識によって、世界は秩序が保たれている。しかし、中国には民主主義もなく、資本主義も未熟だ。そして、国際法を平然と破っている。

中国には自動システムがなく、全て手動だ。中国の政治も経済も軍事も全て、習近平が一人でコントロールしなければならない。勿論、そんなことは不可能だ。

習近平が行った政策は全て失敗している。彼ができることは、対外的には恫喝、国内的には破壊だけだ。従って、中国経済が修復されることはないだろう。

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