銃乱射事件の生存者、目撃者は事件後に何を引き起こしやすいのか

Stressed,Sad,Wrapped,In,Plaid,Young,Woman,Feeling,Cold,,Ill,
 

先日もモスクワのコンサートホールで銃乱射事件が起きましたが、それを目撃した人や生存した人にはその後どんな影響があるのでしょうか。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、銃乱射事件後のうつ病やPTSDに関する有病率を調べた研究結果を紹介しています。

銃乱射事件後のうつ病とPTSDに関する有病率と危険因子

◎要約:『銃乱射事件等の重大な生命の危機にさらされるイベント後には、うつ病やPTSDの発症が多く、身体的受傷や支援の乏しさが危険因子となるかもしれない』

命の危険にさらされるエピソード等、心理的な(身体的な)インパクトの大きな出来事の後には、PTSDやうつ病の発症が多くなるのではないかという推測がされます。

今回は、2017年10月1日にラスベガスで起こった銃乱射事件(60人が死亡、867人が負傷)後のうつ病・PTSDに関して、有病率や危険因子を調べた研究をご紹介します。

Prevalence and Risk Factors of Depression and Posttraumatic Stress Disorder After a Mass Shooting

銃乱射事件後のうつ病とPTSDに関する有病率と危険因子

事件の生存者あるいは目撃者1000人がランダムに抽出され、202人(最終的には177人の回答が有効、74.6%が女性、平均43.5歳)から回答を得ました。

結果として、以下の内容が示されました。

・58人(32.8%)が事件で身体的に受傷し、88人(49.7%)が社会的支援を十分に受けていませんでした。

・87人(49.2%)がうつ病、112人(63.3%)がPTSDの既往を報告していました。

・身体的な受傷があった場合には、(受傷がなかった場合と比較して)36%多くうつ病を発症(ハザード比1.36)、32%多くPTSDを発症(ハザード比1.32倍)していました。

・社会的支援を十分に受けた場合には、(支援を受けていなかった場合と比較して)うつ病とPTSDの発症が少なくなっていました(ハザード比で、うつ病0.51倍、PTSD0.62倍)。

イベントに暴露された際のリスク因子についての理解や、その後の継続的な支援の必要性について確認できる内容でした。

image by: Shutterstock.com

もりさわメンタルクリニックこの著者の記事一覧

もりさわメンタルクリニックが発行する精神医学論文に関するマガジンです。最新の論文を主としておりますが、テーマを掘り下げてやや以前の論文を振り返ることもあります。毎日1本の論文を取り上げて要約をお伝えします。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 精神医学論文マガジン 』

【著者】 もりさわメンタルクリニック 【発行周期】 日刊

print
いま読まれてます

  • 銃乱射事件の生存者、目撃者は事件後に何を引き起こしやすいのか
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け