2.民事裁判において示した元信者としての体験から、解散命令請求裁判の中身もみえてくる
『統一教会の元信者が明かすその手口と実態』の序章にて「私はなぜ入会したのか、なぜ脱会したのか」という自らの体験も書いています。
1999年に私が元信者らとともに旧統一教会に対して起こした損害賠償を求める裁判では、文化庁が指摘する「未証し勧誘」による伝道の違法性を問いました。しかし教団は「信者らが勝手にやったこと」で、教団本部は関係ないとする主張を展開してきましたが、その活動実態を裁判の場で赤裸々に明かすことで、教団側の使用者責任が認められての勝訴判決となりました。
当然ながら、今回の解散命令請求の裁判でも、いかに教団が組織的なお金集めと伝道活動をしてきたのかが問われます。
それゆえに、元信者らの民事裁判の結果は大きなウエイトを占めてくるはずです。
実際に、東京地方裁判所の10万円の過料の決定文なかでも、旧統一教会の不法行為が認定された「民事訴訟22件」について触れています。
「法令違反行為をしたとの疑いがあったと認められる」として、「被害に遭った者すべてが訴訟を提起するとは考え難いことからすれば、22件の民事判決で被害者とされた者のほかにも、(旧統一教会の)信者から同様の被害に遭った者が少なからずいることが推認される」としています。
こうした実態を踏まえたうえで、文科省の報告徴収質問権に教団が答えなかったとしての過料決定となっています。
つまり、今回の解散命令請求の裁判でも、多くの元信者からのヒアリングを通じた内容や、これらの民事裁判の結果は重く受け止められることになりますので、過去の裁判の状況を知れば、今の裁判の状況も自ずとみえてくるということになります。
3.返金阻止の信者らに署名させた念書には2通りのパターンがある
被害者家族である中野容子さん(仮名)の母親は信者時代に約1億円もの献金をしました。そして返金の裁判を旧統一教会に起こしましたが、信者の頃に「返還請求や不法行為を理由とする損害賠償請求など、裁判上・裁判外を含め、一切行わない」ことを約束する念書に教団に指示されて署名をさせられため、地裁、高裁とも敗訴しています。
しかし中野さんは諦めずに最高裁に上告しました。2024年6月10日に最高裁判所が弁論を行うことになっています。
木村壮弁護士は立憲民主党を中心とする国対ヒアリングのなかで、念書合意書には2つの種類があるといいます。
1つ目は「一部の返金をするが、残り(のお金)については放棄させるパターンです。このパターンについては、既に東京地裁、高裁で錯誤もしくは公序良俗に反するということで無効とする判決が出ています」
2つ目は「献金を受ける前の段階で『返金請求をしない、裁判も起こさせない』という合意をさせるパターンです。これがこの中野さんのケースの念書のパターンで、これについては、実は東京地裁で敗訴判決が別件でも出ております。ただその件については控訴した高等裁判所の段階で和解をしていますので、この念書の有効性に関しては確定していない状況にある」ということです。
「今回、弁論が開かれますが、この訴えを起こさせないという合意は、司法の救済を受けさせないというものですので、権利の制限の意味合いが大きいものになります。こういったものの有効性についてやはり最高裁がきちんと判断を示すということは、今後の被害救済にとっても非常に重要だと思いますので、その内容に期待したいと思っております」とも話します。6月の弁論を受けて、最高裁が今後、どのような判断を出すのかに注目が集まっています。
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