「衰退するアメリカの反動」日米比の首脳会談で透けて見える“残念な構図”

 

中国とインドは2020年、ヒマラヤの国境係争地帯で両軍に死者を出す衝突を起こして以降、激しく対立。関係をこじらせてきた。モディのインタビューは下院総選挙を間近に控えたタイミングで行われた。つまり、9.7億人といわれる有権者を意識して発せられたのだ。インタビューの当該部分を以下に抜粋しよう。

「インドにとって中国との関係は重要でかつ意義深い。二国間交流における異常な状態を解消するために、国境における長期化した事態に早急に対処する必要がある。中国との安定した、平和な関係は、両国だけでなく、地域や世界全体にとっても重要だ。私は外交・軍事レベルでの積極的かつ建設的な二国間の接触を通じて、両国の国境の平和と安定を回復し、維持することができると望み、信じている」

反目を続けてきたインドからのある種のラブコールだが、モディの発言に対する中国の反応も素早かった。中国外交部の毛寧報道官は「現在、中印は外交・軍事ルートを通じて国境情勢に関する問題の解決について緊密な意思疎通を保ち、積極的な進展を遂げている」とした上で、「われわれはインド側が中国側と歩み寄り、戦略的な高みと長期的な視野をもって二国間関係を理解し、相互信頼を揺ぎなく進め、対話と協力を堅持し、意見の相違を適切に処理し、両国関係が健全で安定した軌道に戻って前進するよう推進することを希望する」と答えている。

中国もインドも話し合いで問題を解決することに積極的だ。少なくとも諍いを抱えることで第三国に付け込まれ利用されるデメリットをきちんと把握しているという点で、さすがに大国だと言わざるを得ない。

一方でアメリカの先兵として南シナ海で中国と向かい合う道を選んだフィリピンは、前政権と中国との約束をめぐって紛糾する。マルコス大統領が前大統領のロドリゴ・ドゥテルテが中国との間で結んだ「紳士協定」を「知らなかった」として、「密約」「ぞっとする」と批判したからだ。

一国のトップが前大統領の約束を「知らなかった」と反故にできるならば中国は被害者だ。しかもマルコスが「ぞっとする」と批判した紳士協定の目的は現状維持であり、妥協ではない──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年4月14日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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