「衰退するアメリカの反動」日米比の首脳会談で透けて見える“残念な構図”

Vilnius,,Lithuania.,12th,July,2023.,G7,Leaders,Event,To,Announce
 

日本とアメリカ、フィリピンの3カ国の首脳がアメリカのホワイトハウスで会談。対中国を意識した動きに対し、米国内からも冷めた見方が出てきているようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』で、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂聰教授は、世界が“アメリカの衰退”を前提にした動きを始めているとする米外交誌『フォーリン・ポリシー』編集長の言説を紹介。『ニューズウィーク』のインタビューでのインドのモディ首相の注目発言を取り上げ、世界には日本やフィリピンとは真逆の思惑や動きがあることを伝えています。

インド、フィリピンとの争いから見える いまが中国との問題解決の好機

岸田文雄首相が、ジョー・バイデン大統領の招きを受け、国賓待遇で訪米した。このニュースは中国でも大きく取り上げられた。中国は、日米がミサイルシステムの強化や米英豪の安保枠組み「AUKUS」への日本参加の可能性、台湾問題を話題にすることなどで警戒してきた。それに加え今回はフィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領も招いて日米比の首脳会談を行った。

中国の視点からすれば、台湾海峡から南シナ海に至るまで中国包囲網が着々と築かれているような危機感を抱いたはずだ。当然、中国外交部の報道官は連日のように、強い口調で日米比をけん制し続けた。

だが、ワシントンの動きが中国を確実に追い詰めているのかといえば、実態は必ずしもそうなってはいない。現状を見る限り、アジアで使いやすい駒を使い中国に嫌がらせをしている構図が透けて見えるだけで、広がりに勢いはない。むしろバイデン政権のこうした仕掛けは、「衰退するアメリカの反動」という文脈でとらえられる面もあるようだ。

4月8日、米外交誌『フォーリン・ポリシー』のニューズ・レター『EDITOR’S NOTE』での指摘もそうだ。筆者のラビ・アグラワル編集長は「米国が相対的に衰退していると考えるかどうかにかかわらず、ひとつはっきりしているのは、世界の他の国々はすでにそうであるかのように振る舞っている」と喝破する。すでに「ミドルパワーと呼ばれる国々は、進化する世界秩序をいかに利用すべきかを模索している」と。

その典型例としてアグラワルが挙げるのがインドだ。インドの存在感が国際社会で高まるにつれて、アメリカは対中国でのインドを重視するようになった。しかしそのインドは西側先進国を中心とした従来の国際秩序に必ずしも従順ではない。

実際、インドの不可測性は、ワシントンで日米比が中国を取り囲むための首脳会談を行おうとする直前に発揮された。世界を驚かせたのは米誌『ニューズウィーク』のインタビューに応じたナレンドラ・モディ首相の発言だ。モディは、中国との「長期化した国境の状況」に言及するなかで、「早急に対処する必要がある」と、歩み寄りともとれる発言をしたのである。

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