原発を拒否した四代正八幡宮に、神社本庁から猛烈な嫌がらせ
建設計画地は、この神社の土地が2割を占めており、周囲には鎮守の森が広がっていた。この森に上関原発の炉心と発電タービン建屋を建設する計画が持ち上がり、神社側に土地の買収が働きかけられるようになったのだ。
四代正八幡宮の林春彦宮司は、「原発は人間・自然を破壊する。死んでも土地は売ることができない」と言って、断固拒否。
ところが、山口県知事や政治家などから働きかけが続き、さらには工藤伊豆総長(当時)率いる神社本庁から、林宮司のもとに売却を認めるよう圧力がかかり、言うことを聞かないとなると、ビラや新聞を使ったデマの流布など数々の嫌がらせが行われた。一年一度の大祭・秋祭りでは、予告もなしに山口県神社庁の副庁長が乗り込んできて、祭祀を妨害したという。
当時のことについて、林宮司が「人間・自然破壊の原発に神の地は売らず 神社、鎮守の森の永遠は村落の永続」という手記を発表している(『現代農業』2002年5月増刊号)。
林宮司は、神社地は「現代の法制度においてこそ、一宗教法人の所有ということになっているが、理念的な観点からみれば、村落共同体に帰属すべきもの」とし、祖先の人々の辛苦によって確保されてきた基本財産であり、そのような歴史的由来をもつ神社地を「現代に生きる者たちの短絡的な経済的利益によって売却できるはずがない」とした。
また、宗教法人法第18条5項で「その保護管理する財産については、いやしくもこれを他の目的に使用し、又は濫用しないようにしなければならない」とされていること、神社本庁憲章の第10条で「境内地、社有地、施設、宝物、由緒に関はる物等は、確実に管理し、みだりに処分しないこと」と規定されていることを指摘し、法律や神社本庁の規定に則っても、神社地は、真に地域住民の福利に益さないかぎり、売却できない性格のものであると綴っている。
神社本庁の代表役員が神社地の売却を承認することにでもなれば、それは自らが制定した法規を自分の手で破壊することであり、神社本庁自体の瓦解を意味しよう。瀬戸内海地域に暮らす多くの人々を塗炭の苦しみに陥れる、人間の生死にかかわる問題を、いったい誰が責任をとるというのであろうか。これが犯罪でないならば、世の中に犯罪というものはない。
当職に課せられた使命はただひとつ。地域住民の安全を守るために、その基盤となる八幡宮の神社地を護持することに懸命の努力を続けてゆくことのみである。
(山口県上関町・八幡宮 林晴彦宮司)
私利私欲のために神社の土地をころがしてカネを稼ぐ人間たちと違って、立派な宮司だと文面からわかる。雑誌の発行元が、当時のこの記事をセレクトしてホームページ上に公開しているので、興味のある人は、全文を読んでみてほしい。