中国、ロシア、北、イラン。戦時協力を高める“戦争の枢軸”が狙う「国際秩序の破壊」と新しい統治の形成

 

何としても防がなければならないロシアの勝利と中東全面戦争

今、この脅威に対抗するためにアメリカ軍を軸に、日米韓の軍事協力やAUKUSの強化、そしてアメリカとフィリピンのミサイル配備訓練を含む高度の軍事演習などをアジアで行って中国による脅威に対峙していますが、アメリカは現在、派兵はしていなくても、ウクライナ戦争にどっぷりと浸かっていますし、戦略的同盟国であるイスラエルの後ろ盾として中東危機にもコミットしており、多方面での対応を強いられています。

2010年代に入るころまでは“世界の警察官”として7つの海すべてをカバーし、同時に2つ以上の紛争に対応できる体制を敷いていた米軍ですが、オバマ政権以降、大きな方針転換を行い、2010年代後半以降、1つの大紛争に対処する能力しか持てなくなっています。

NATOやAUKUSなどを含む米軍主導型の同盟関係サイドは、早期にアメリカ・アジア・欧州の同盟国間で、同時進行型の大紛争に対する対応策を構築して確立する必要が喫緊の課題として挙げられます。

もし、協議に手間取り、綱引きを行った結果、その場対応に陥ってしまった場合、欧州各国とアジア諸国、そして中東各国も、戦争の連鎖の前に慌てふためき、結果として、アジアと欧州がアメリカの戦力を奪い合うという、同盟内での内紛が勃発する危険性が現実のものに替わってしまいます。

そのためにはロシアによる勝利と、中東地域における全面戦争を何としても防がなくてはならないのですが、どちらのフロントもあまり有利な望ましい状況とは思えません。

ロシア・ウクライナ側のフロントにおいては、先述の通り、608億ドルの緊急支援予算が米議会を通過して1週間から2週間ぐらいの間に、武器弾薬の第1陣がウクライナに届けられるはずですが、そこにはゼレンスキー大統領が要求する重火器や長射程のミサイルなどが含まれるかどうかは未定で、5月から6月に予想されるロシアからの大規模攻勢に対抗するためのタイミングに間に合うかどうか微妙です。

またウクライナ軍の戦略では、5月から6月に起こると言われているロシアによる大規模攻撃を耐え、2025年春までには対ロ反転攻勢に出たいと考えているようですが、これらもすべて欧米からの支援頼みであり、以前、NATOが合意した武器生産に対する支援などがそのタイミングまでに間に合うかどうかも不透明だと言われているため、捕らぬ狸の皮算用にならないかとても心配です。

ロシア政府のペスコフ大統領報道官は「ウクライナはさらに荒廃し、キーウ政権の愚かな行動のために、さらに多くの犠牲がウクライナにもたらされることになる」と警告していますが、ロシア側では戦時経済体制がすでに安定的に稼働し、武器弾薬の生産体制と、戦争の枢軸国との戦時協力体制が確立していることから、すでに5月から6月の大規模攻撃に加え、数段階に分けてウクライナを徹底的に叩くための作戦と体制を整えているようだとの情報もあります。

一部で囁かれる戦術核の使用については、個人的には、いろいろな状況に照らし合わせて非常に非現実的であると考えていますが、実際にはすでに臨戦態勢には入っているようで、十分、核兵器による脅しは効いているように思います。

心配なのは、ロシア政府内・議会内の強硬派の勢力と発言力が増しており、2030年までのマンデートを獲得したプーチン大統領も、強硬派の意見を取り入れがちであると言われていることから、強硬派からの要求のガス抜きのための使用は否定できないのではないかと懸念しています。

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