台湾が国際機関から次々排除。習近平による圧力が強まっている

 

中国側は、1992年に当時の台湾の国民党政府と合意したとされる「92共識(92年コンセンサス)」を常に持ち出して、台湾に認めろと迫っています。この「92共識」とは、中国共産党と台湾の国民党のどちらが中国の真の統治者であるかという解釈件は別として、「中国と台湾は一つであるという原則を認めあったとするものです。しかし、蔡英文総統は「92共識」を認めていません。

そもそも、1992年当時、「92共識」なるものの存在が発表されたこともなく、2000年になって初めてあったという話が出てきたものです。2000年の総統選では民進党の陳水扁が国民党の候補者を破り、初めて国民党以外の者が総統に就任することになりましたが、選挙直後、国民党の行政院大陸委員会主任だった蘇起が、大陸側と92共識があると言い出したのです。

つまり、台湾独立を主張する民進党が政権を取ったので、それに楔を打ち込むために、わざわざそのタイミングで持ち出した可能性が高いのです。しかも「92共識」については合意文書もなく、単なる口頭での合意だというのです。

これに対して、陳水扁や民進党政権下の行政院大陸委員会、さらには李登輝元総統や辜振甫海峡交流基金会理事長などまで、そのような合意は存在しないと反論しました。しかし下野した国民党の主席であった連戦は2005年、中国で中国共産党の胡錦濤総書記と国共トップ会談を行い、両党の合意として92共識を文書に書き入れたのです。

こうして、はじめは何もなかったことが、次第に既成事実化されていったのが「92共識」です。これも台湾と中国の歴史戦だといえるでしょう。

中国が台湾に「92共識」を認めさせたい意図は明らかです。「中国は一つ」を台湾が認めているなら、中国の台湾への武力進攻も統一を望む台湾人を解放するためだという方便になるからです。

それはわかっているので、民進党政権から再び政権を奪い返した国民党の馬英九総統も、「92共識」は堅持しつつも、「どちらが真の中国の統治者であるかという解釈権については台湾と中国のそれぞれが留保する」という取り決めである「一中各表」を中国に認めるように要求しました。

台湾と中国では考えが違うのだということを明確にしておかないと、中国に侵攻の口実を与えかねないからです。しかし、中国側はこれを拒否してきました。つまり中国としては、「台湾は中国の一部であり、多くの台湾人もそれを望んでいるが、少数の人間が事実を捻じ曲げて台湾を支配している」という構図をつくり、台湾侵攻の口実としたいわけです。

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