ただ、このキャリアが儲けてしまった「販売手数料の削減」というのは、もともとは消費者にキャッシュバックとして還元されていた金額とも言える。つまり、本来であれば、消費者が手にしていたであろう数百億円が、結果、キャリアにプールされ、利益になってしまったのだ。
総務省の意向として「キャッシュバックは一部のユーザーだけが利益を得て、ほかのユーザーには不公平だ」という指摘があって、キャッシュバックは終息したはずだ。
しかし、いまのままでは、単にキャッシュバックを辞めたことで、ユーザーへの還元は奪われ、キャリアだけが儲かる構図になってしまっている。
解約率を見ても、ソフトバンクだけが解約率がアップしているものの、KDDIとNTTドコモはかなり改善している。おそらく、キャッシュバック競争がなくなり、ユーザーがキャリアに囲い込まれている傾向が強くなっているのだろう。
常日頃から「キャリアは儲けすぎ」という指摘があるなか、このままでは、競争はなくなり、さらにキャリアばかりが儲かる構図になっていく。
「キャッシュバックを復活せよ」とは言わないが、販売手数料削減で儲けた分を、ユーザーに還元するような施策や料金引き下げを促すことまで総務省はやらないと、結果、日本の通信業界は寡占化が進み、悪い方向に進む気がしてならないのだ。
著者/石川 温(ケータイ/スマートフォンジャーナリスト)
日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。
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